1 森林資源の管理・利用について
① 森林所有者に返還された水源林整備協定林の管理について
県の森林の4割近くが、植林されたスギ・ヒノキの人工林です。
これらの人工林は、長年に渡る木材価格の低迷などに伴い、所有者による森林の手入れが進まず、荒廃が進んでいたため、平成9年度から県は所有者と20年間の水源林整備協定を結び、採算の見込めない人工林を広葉樹が入り混じる針広混交林等に誘導しています。
現在、事業開始当初に協定を結んだ森林が協定期間を満了し、延べ約5,800人の所有者に返還され始めています。
森林組合員や森林所有者の方々から、
・地元の山を知っている組合員も少なくなり、森林整備の方法、地域と森林の関係、これまでの経緯を聞けない
・今後自分がもっている森林をどうしたらいいか
・自伐型林業や森林空間の活用など自ら前向きに考えたい
などのお声を伺っています。
将来に渡り水源環境の保全・再生を図るためには、所有者に返還された森林が、水源かん養機能など公益的機能を発揮し続けるよう対策を検討し、取組みを進めていくことが重要です。
そこで、
(1)これまで水源林整備協定に基づく森林整備にどのように取り組んできたのか
(2)返還された水源林の管理と、森林所有者のフォローに対して今後どのように取り組んでいくのか
見解を伺いました。
知事答弁
(1)森林所有者に返還された水源林整備協定林の管理
県はこの協定に基づき、これまでに約12,900ヘクタールの森林を確保してきました。
スギやヒノキの人工林では、本数が半分以下になるまで間伐を繰り返し行い、空いたスペースに自然に広葉樹が入り込み、生育していけるような環境を整えています。
併せて、シカの生息密度が高い箇所では、育ち始めた広葉樹をシカの食害から守るため、シカの管理捕獲や柵の設置などを一体的に行うことで、スギやヒノキと広葉樹が混じる混交林に誘導しています。
こうして整備した森林は、協定期間の満了に伴い、平成29年度からこれまで、面積にして約1,900ヘクタールが所有者に返還されています。
(2)返還された水源林の管理と森林所有者へのフォロー
返還後の水源林の管理は、原則森林所有者が行うことになりますが、返還時の森林は広葉樹の若木が成長している段階で、その後、時間の経過とともに自然に混交林が形成されていくことから、特段の整備は必要ないとされています。
しかし近年の異常気象やシカの生息状況を見ると、返還した森林が自然災害やシカの食害に見舞われることも想定されるため、定期的な巡視と災害発生時等の対応が必要です。
そこで県は、返還した森林の位置図や県が行った整備の台帳等を所有者にお渡しし、日頃の管理や森林を見回る際に役立ててもらうこととしています。
また、災害時等の迅速な対応を図るため、広域的な森林の巡視と航空レーザ測量の解析結果を組み合わせるなど、新たな手法により、正確な状況把握に努めるとともに、災害時等における所有者からの相談にも応じていくとのことです。
水源林整備協定として、平成9年に県と所有者が借地契約をしてからすでに20年以上が経ち、この間、相続などで所有者も変わってきています。
答弁の中で、整備履歴を渡すとのことでしたが、これまで水源の森林づくりを進めた経緯等もしっかりと説明していただき、森林の機能、所有者の意向などを踏まえて、引き続き返還後の取組みを続けることを求めました。
また、返還後の定期的な巡視や航空レーザ測量を活用した取組みについても、返還森林の状態等を把握することは非常に重要であるため、長い目でこの取組みを進めることを知事に求めました。