9月15日に会派を代表し、代表質問に登壇しました。
選出地域の課題だけでなく、県政全般に関する広域的な視点が求められます。
佐藤は、コロナ対策や教育委員会におけるICT運用などの喫緊の課題から、未来に向けたグリーンインフラの視点に立った県民の安全対策など、7問を伺いました。
(1)自然や生態系を活用した減災・防災対策
近年の災害は想定外の甚大な被害をもたらすとともに、複合的に発展する時代になってきており、備えに対してあらゆる角度からの視点が求められます。
その中で、近年Eco-DRRと呼ばれる生態系を活かした減災・防災対策が注目を浴びています。自然災害に逢いやすい土地利用や開発を避けることや、海岸林や湿原、森林などの生態系を管理・保全することで災害に強い地域をつくるという考え方です。
※環境省リーフレットより
※Eco-DRRのパンフレットはこちら
こうした生態系を活用した減災・防災対策は、近年国を始め、各種行政計画で位置づけが進んでり、県においても国土強靭化地域計画や水防災戦略を策定し、台風や豪雨による災害対策工事の前倒しや早期着工に取り組んでいます。
しかし、費用面等からハード対策には限界があります。
そこで、ソフト対策として住民の自助と共助を促す仕組みづくりをより進める必要があると考えています。
例えば、河川や公園などの維持管理や整備が考えられます。
平時は緑の憩いの場として遊びや休憩の場となりえる場所ですが、地域住民も草刈りなど維持管理に加わることで、河川の氾濫や遊水の原理、地中への雨水の貯留の仕組みを学ぶことができ、災害時の行動にも役立てることが期待されます。
昨今の災害は複数の分野にまたがり、広域に及ぶため、県は市町村と連携し部局を横断した取組みが求められます。
例えば、主に水害対策を対象とした市町村地域防災力強化事業費に、生態系を活かした取組みへの支援を追加し、市町村に助言や支援ができるのではないかと考えます。
そこで、自然や生態系を活用した減災・防災対策についての考えを、今後の防災対策に盛り込む考えを伺いました。
知事答弁
本県には、多くの人口・産業が集積する一方で、相模湾や東京湾に面した海岸や、100を超える河川、県西部のやまなみなど、豊かな自然があり、県はこれまでも、人工物の整備による防災対策に加え、自然や生態系を活かす視点から様々な防災・減災の取組を進めています。
▶湘南海岸で保護・育成している砂防林
→自然環境や景観を維持しながら、砂の飛散や塩害、強風から県民生活を守る
▶水源地域の山林
→水源涵養機能にとどまらず、土砂の流出や崩落等に対する防災機能を備えている
▶河川事業
→遊水地を整備して、平時は自然と親しめる公園などとして活用するほか、流域のあらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる治水対策に取り組んでいる
併せて、今年度修正を予定している地域防災計画に、新たに、防災・減災に自然や生態系を生かす視点を反映し、対策の一層の充実に努めていくとの答弁を得ました。
再質問
市町村地域防災力強化事業費補助金による支援も必要だと思うが、所見を伺う
市町村が行う自然環境を活かした防災・減災事業が、地域の防災力に確実につながるものであれば、補助の対象となるため、引き続き支援する。
この質問をしたきっかけは、ダムができたことで、住民が過度に信用することにつながり、かえって防災意識を薄らげているのではないかと感じたことでした。
生態系を活かした取組みをとおして日ごろから住民が主体的にかかわってもらう視点が重要であり、この点で行政としての後押しができないかと考え、市町村地域防災力強化事業費補助金の活用について確認しました。
今後、新たな予算の確保や支援の拡充等の検討についても求めました。
(2)自然環境が有する機能を取り入れたグリーンインフラの取組み
国の資料によると、最近の大雨は、時間雨量50㎜以上の短時間豪雨の発生件数が約30年前の1.4倍ともいわれ、今後洪水の発生頻度は約2倍から4倍になるという報告もあります。
これまでと同様のハード対策を進めるだけでは対応が難しいことに加え、今後将来に渡って甚大化と頻発化が想定される自然災害に対し、多くの費用がかかることが懸念されます。
※台風19号の襲来により、道路わきの斜面の裏に水が通り、従来であれば崩れることがなかったものが、法面の裏側をえぐる大きな被害が出た県道70号
このような状況の中、グリーンインフラという考え方が提唱されています。
自然環境が有する多様な機能を、社会における様々な課題解決に用いるもので、従来のインフラ整備に併せて、水・緑・土・生物といった自然環境と共生した社会資本整備や土地利用等を進めるものです。
※環境省リーフレットより
一方で、新たな治水対策として、流域治水の取組みが本格的に始まりました。
河川の氾濫を防ぐため、河川整備などのハード対策をより一層加速化するとともに、都市の中で雨水を貯留したり、流域のあらゆる関係者が協働して対策に取り組むほか、グリーンインフラの概念も取り入れることとしています。
※国資料より
グリーンインフラは、定量的な効果や、維持管理等の経費がわかっていない等の課題があるものの、水防災戦略として、河川や海岸などのハード対策に取り組む県においても、積極的な検討を進めていく必要があると考えます。
そこで、自然環境が有する機能を取り入れたグリーンインフラの取組の今後の方向性について、見解を伺いました。
知事答弁
持続可能な社会を形成するためには、都市基盤の整備にあたり、コンクリート等の人工物だけでなく、自然環境が持つ様々な機能を活用していくことが大切です。
県では、今年3月に改定したかながわ都市マスタープランに、今後の社会資本整備にあたっては、グリーンインフラの考え方を踏まえて取り組むことを方針として位置付けたところです。
この方針を踏まえ、これまで進めてきた都市基盤の整備について、まずはグリーンインフラの観点で、再点検することに直ちに着手し、自然環境が持つ、防災・減災、地域振興、環境など様々な機能を、グリーンインフラの概念に照らし、実際の都市づくりの各事業に、どのように反映できるか、検討を始めます。
グリーンインフラについては、国内でもまだ議論が始まったばかりでもあり、今後費用面等含めた検討が始まっていきます。
非常に幅広い考えであることから、今後も各行政計画に位置付けをすることや、部局の横断をした取組みを進めるよう求めました。
また、ハード対策としてコンクリートで固めるだけの対応はどうなのかと話題になることもあります。
既存のインフラとのバランスを考えた整備を求めました。