会議日:令和4年6月20日

※神奈川県森林組合連合会の木材加工の様子
我が国では、戦後に植林された人工林の多くが伐採期を迎え、近年、森林資源の充実とともに木材生産量が増加し続けていますが、それでもなお、多くを海外からの輸入に頼っているのが現状です。
昨年は、コロナ禍の影響により、世界的に木材の品不足や価格高騰、いわゆるウッドショックが起こり、木材の輸入が滞ったため、国内の木材流通や住宅建設に大きな混乱が生じました。また、最近でも、ロシアのウクライナ侵攻の影響で輸入材の供給不安が続いており、経済的な安全保障の観点から国産材の活用が見直されているところです。

一方、気候変動による環境への影響が世界的に顕在化し、国内外で脱炭素社会実現への取組が加速化してきました。
こうした中、木材を建築物等に利用することが、脱炭素社会の実現に貢献するものとして注目され、国産材の活用への期待が高まってきています。本県においても、戦後、スギやヒノキの植林や保育が進められ、現在、森林蓄積量は1千9百万㎥以上と、森林資源は充実してきています。
県では、平成9年度から、手入れの進んでいない私有林を森林所有者に代わって管理・整備を行う「公的管理」を開始し、平成19年度からは水源環境保全税を活用し、取組みを加速化して森林の適正管理を進めながら、間伐材の搬出に対する支援を行い、森林資源の有効活用も進めています。

山から搬出された間伐材は、曲がりのない材は柱や板などに加工されて建築用として利用され、曲がりの大きい材はチップに加工され燃料等に利用されますが、本県ではチップにされるものが少なくないと聞いています。
今後の森林資源の活用に当たっては、脱炭素社会実現への貢献など、最近の国産材への期待を踏まえた活用を図りながら、木材の安定供給に貢献していくべきではないかと考えます。
そこで、脱炭素社会への貢献や木材の安定供給などの視点から国産材利用の期待が高まる中、本県の森林資源の活用をどのように進めていくのか、知事に見解を伺いました。
知事答弁

森林は、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収し、伐採後は、木材として建築物等に利用することで、長期間二酸化炭素を閉じ込めておくことができるため、脱炭素社会の実現にとって重要な資源です。
また、昨年来の木材輸入の停滞や不安定化により、国産や県産の森林資源の果たす役割、重要性は高まっていると認識しています。
県ではこれまで、森林資源の有効活用のため、間伐材搬出補助など様々な支援に取り組んできた結果、現在では、取組開始前の平成16年度と比較して約5倍の3万立方メートルをコンスタントに生産できるようになり、量的な面で成果が出ています。

一方、木材の利用面を見ると、全てを建築用に利用しているわけではなく、燃料用チップとしての利用が2割から3割ほどを占めています。脱炭素社会の実現に向けては、燃料として燃やしてしまうのではなく、極力建築用として加工・利用していくことが重要です。
そのためには、山から伐り出した時点では混在している木材を、建築用材に向いている材と不向きな材とに丁寧に仕分ける必要がありますが、手間やコストが掛かるため、必ずしも十分に行われておらず、チップとされてしまう木材があるのが実状です。
こうした課題を解決するためには、林業事業者、市場事業者、木材加工業者など木材の流通に関わる関係者の理解と連携・協力が不可欠です。

そこでまずは、これらの関係者と、木材利用に対する昨今の社会的ニーズをしっかりと共有した上で、丁寧な仕分けなど、建築用材の拡大に向けた具体的な方策の協議・検討を促していきます。
さらに、その協議結果を踏まえて、県としてどのような支援ができるかについても検討していきます。
林業・木材業界と県が連携・協力することにより、木材の安定供給や脱炭素社会に資する森林資源の活用を進め、社会のニーズに応えてまいります。
要望

今後、仕分け等を行って搬出された材木についての活用を図っていく、そして、関係者とも共有していくという答弁でしたが、そういったことを是非お願いしたいと思います。
現在は水源税があることで、山からの木材の搬出がより多く行われています。また新たに森林環境税が令和6年から徴収となりますが、県民の目線で税の負担をしている側からすると、県産材がしっかり有効に活用されてほしいという気持ち・期待感があります。
一方、材木の利用となるとどうしても市場での価格や建築での使用法、森林産業のサプライチェーンなどに左右されがちです。本県に限りませんが、木材は搬出期を迎え、今後の課題としては、こうした木材の搬出と使用の循環がしっかり作られていくことです。
本県の森林は公的管理の面が非常に強いと思いますが、是非、「売る」という視点を持ってやっていただきたくことを求めました。
全国的にも国産材の安定供給が求められている今だからこそ、そして今後の財源の課題もありますが、県としてさらなる取組をお願いしたいと思います。