会議日:令和5年9月19日【一般質問】
流域治水に対する県民意識の向上について
近年、地球温暖化の影響による気候変動が顕在化し、全国各地で豪雨による災害が多発しています。
今年の6月から7月にかけての梅雨の時期には、各地で大雨による被害が相次ぎ、政府は、全国一律で激甚災害に指定するとの報道もありました。
また、8月にも、台風7号や、それに伴い発生した線状降水帯による大雨により、鳥取県に大雨特別警報が発表され、住居の浸水や橋の落下、孤立集落の発生など大きな被害が発生しました。
このように、最近は台風のみならず、停滞する前線やゲリラ豪雨のような局地的豪雨など様々な要因による降雨が激甚化、頻発化しており、いつどこで大規模な水害が発生してもおかしくない状況になっています。
国は、こうした激甚化、頻発化する災害に備えるため、従来の管理者主体の河川等の整備を中心とした治水対策から、流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で水害を軽減させる流域治水への転換を打ち出し、全国でハード・ソフト両面から対策を推進しようとしています。
私は、今年4月に、令和2年7月豪雨で大きな被害を受け、現在、流域治水の取組を先進的に進めている球磨川流域を視察するため、熊本県に赴き、そこで実践されている様々な取組について説明を受けました。
その説明の中で、国や県が行う河川の施設整備は、住民に安心を与える反面、避難に対する意識を低下させてしまうこともあると聞き、人の命を守るには、施設整備のみならず、住民に対してハード・ソフト両面から進める流域治水の意識づけを行うことが大変重要であると強く感じました。
熊本県では、県民の意識向上のため、様々な工夫をしながら施策の周知に取り組んでおり、例えば、球磨川流域の地形の特徴が一目で分かる立体地図や、上流から下流までの流域全体の取組を紹介する動画などのコンテンツを制作し、広く県民に公表するといった取組を行っており、今後は小中学生を対象にした周知活動を行うとのことでした。本県も、令和5年3月に改定した神奈川県水防災戦略において、水害対策の基本的な考え方として流域治水を位置づけたと承知していますが、今後、この取組を推進させていくためには、県民を中心にあらゆる関係者に対し、流域治水に対する県民意識の向上を図っていく必要があると考えます。
そこで、県は今後、流域治水に対する県民意識の向上にどのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺いました。
知事答弁
近年、激甚化、頻発化する豪雨災害から命を守り、被害の軽減を図るためには、新たな治水対策である流域治水の取組を進めることは大変重要です。
流域治水は、河川の堤防や遊水地の整備など、氾濫を防ぐための対策に加えて、氾濫が発生した場合でも、その被害を最小限とするために安全な区域に住宅等を誘導するまちづくりや、逃げ遅れゼロを目指した避難体制の強化などを流域全体で行う取組です。
この取組は、行政関係者だけでなく、住民や企業など流域のあらゆる関係者が協働して、様々な水害対策を継続的に進める必要があります。このため、全ての関係者が水害のリスクや流域治水の取組を自分事として捉え、主体的な行動につなげていくことが何よりも重要ですが、流域治水に対する認識はまだ十分に広がっているとは言えない状況です。
そこで、県は、流域治水の意識向上を図る取組を進めることとし、昨年度は、県民の皆様を対象に地下トンネルの治水施設の見学会と併せて、流域治水の考え方を説明するイベント「流域治水かながわ」を開催しました。
質問後、川和地下遊水池で行われた、流域治水かながわを視察
また、流域治水の取組内容を広く知っていただくため、河川や農林、まちづくりなどによる様々な取組を流域治水プロジェクトとして分かりやすく取りまとめ、県のホームページで公表しています。
今後はこうした取組に加え、市町の防災講座などを活用し、地域の水害の歴史や治水上の課題を学ぶ機会をつくるなど、より身近な水害のリスクを知っていただくことで、自分事化を促します。
さらに、防災教育の教材に流域治水の考え方を盛り込み、学校教育の場で活用するなど、若い世代の意識向上も図り、流域治水の取組が将来にわたって継続されるようにしていきます。
今後もあらゆる機会を捉えて、流域治水に対する県民意識の向上に努め、取組を推進することで水害から県民の安全・安心を確保してまいります。
意見
流域治水は法律改正などからまだ日が浅く、十分に知られていないと感じます。流域治水の認知度というのはあまり調査がありませんけれども、私が少し調べたところですと、民間会社と大学が2020年に球磨川の流域で行ったアンケートによりますと、流域治水について内容を知っていたという方は23%、流域治水について内容は知らなかったが聞いたことがあったという方が52%、流域治水について初めて聞いたという方が25%という結果であったということです。
人間は、どうしても自分の住んでいるところにしか意識が行かないというような側面があるかもしれませんけれども、流域全体に目線を向けることができれば、避難の在り方、住まい方、そして事業の方向性などが変わってくると思います。
最近、国の動きもあるということもおっしゃっておりましたけれども、県としても工夫をして県民に伝える取組を行っていただきたいというふうに思います。