会議日:令和6年9月13日【代表質問】
観光客増加に伴うインフラ整備等の受益者負担について
8月の日本政府観光局の発表によると、今年7月の訪日客数は約329万人に達し、前年同月比で41.9%増、2019年同月比では10.1%増となりました。これにより、2か月連続で単月として過去最速を記録し、7月までの累計でも過去最高で2,000万人を突破したことが報告されています。
2024年8月21日日本政府観光局報道発表資料抜粋
県内では、昨年の実績として、主要観光地である横浜市、箱根町で、いずれもコロナ禍前と同様、もしくはそれを超える観光客数が報告され、特に箱根町では、コロナ禍から平時への移行を実感しているとの発表がありました。こうした観光客の増加に伴い、地域のインフラ整備や環境保護の必要性も一層増しています。
訪日客でにぎわう観光地を抱える自治体では、オーバーツーリズムやマナー違反といった観光公害対策のため、観光地における受益者負担、具体的には観光税や宿泊税の導入が全国各地で議論されています。
東京都では、2002年にいち早く宿泊税を導入し、現在では大阪府や福岡県、さらに京都市、福岡市、倶知安町などの自治体でも宿泊税が導入されています。
また、観光税としては、広島県の宮島において、島に入る際に1人1回100円の訪問税が導入されており、山梨県では、富士山登山口に設けるゲートの運営や噴石・落石用シェルターの整備など、安全対策の費用として1人2,000円の通行料を徴収しています。
さらに、福岡県太宰府市では、歴史と文化の環境税として、指定する有料駐車場に駐車する車から特別徴収を行い、年間で約7,000万円の収入を得ています。
観光財源に関しては、平成29年に、神奈川県観光客受入環境整備協議会が宿泊税の導入を拙速に進めるべきではないとの結論を出していると承知しています。しかし、県内を訪れる観光客が右肩上がりで急増している現状や、今後、コロナ禍以前のように、中国人旅行者が本格的に戻ってくることを想定すると、外国語の観光案内やWi-Fi整備、ごみ処理や環境整備などのインフラ対策に関する受益者負担の在り方を再検討する必要がある時期に来ていると考えます。
実際、検討から導入までには国の審査などが必要であり、すぐに導入できるわけではありません。しかし、少子高齢化の進行により、今後、税収減が予測されるため、観光分野に特化した法定外目的税を導入し、おもてなしやオーバーツーリズム、観光公害対策に充てるための議論が早急に必要だと考えます。
そこで、今後も増加が予想される観光客の受入れ環境整備において、現在の財源では対応が難しくなることが予想され、観光地に対する費用負担を考える上で、受益者負担の導入に向けた具体的な検討を始める必要があると考え、知事に所見を伺いました。
知事答弁
観光消費を促す質の高い観光の実現には、観光客のニーズに応じたサービスの充実や設備整備を行うことが重要です。県はこれまで、国内外からの観光客が安心して訪れ、快適に滞在できるよう、観光客の受入れ環境を整備する事業者に補助を行ってきました。また、県では、国がより一層の観光振興を図る財源として創設した国際観光旅客税について、地方自治体への財源配分を要望しています。
他の自治体では、外国人旅行者も増加する中で、その受入れ環境を整備するための新たな観光財源を導入する動きがあります。例えば、宿泊税のほか、観光客の安全確保策を講じるための登山道の通行料導入や、観光施設の維持経費の一部を入場料に上乗せすることなどを検討している自治体もあります。
一方、こうした観光財源の導入に当たっては、関連システムの整備や人の確保など、観光事業者等の負担も十分考慮する必要があります。そこで、県では今年度、経済団体、観光事業者等で構成する神奈川県観光魅力創造協議会を通じて事業者等の御意見を伺い、
県HPから
新たな観光財源と受益者負担の在り方を研究していきます。こうしたことにより、多くの観光客が快適に滞在できる環境を整え、さらなる観光振興に取り組んでまいります。
意見
年度内に宿泊事業者の意見を伺うとのことですが、訪日観光客数による需要が回復し、上半期の外国人観光客数は約1,778万人と過去最多を記録しています。これに伴い、県内観光地の混雑やオーバーツーリズムへの対応は課題となっており、その財源の確保は急務と考えます。
こうした状況の中、ほかの都県市では宿泊税の導入が広がっており、観光振興やインフラ整備に活用されています。観光需要を持続可能なものにするためにも、受入れ体制を強化するための受益者負担の在り方について、まずは議論の場を設けていただくことを求めました。