会議日:令和6年10月3日【建設・企業常任委員会】
本県の河川の氾濫対策について
《台風10号やこれまでの河川の被害状況》
※建設・企業常任委員会報告より出典
8月の台風10号の影響による豪雨では河川の被災が相次ぎ、地元厚木市の荻野川や玉川が被害に合ったことなどが報告されるなど大きな影響がありました。
本県では、溢水や氾濫した河川も多かったことから、今回は本県の河川の氾濫対策について質疑を行いました。
今年、8月末には台風10号の影響による集中豪雨で県内各地でも河川が氾濫した地域があり、8月の観測史上最大の雨量を記録した市町もありました。二宮町では緊急安全確保が一時発出され、軽傷者5名の人的被害があり、死者や重傷者が出なかったことは不幸中の幸いでしたが、県民の財産を守るという観点では床上・床下浸水や車両の水没など大きな被害を受けられた県民もいらっしゃったことから、県として再発の防止に向けた早急な対応が求められます。
そこで、今回、台風の影響を受け水害が発生したことを受け、県管理河川における氾濫を防ぐ取組みを水防災戦略や流域治水の推進という観点から質問します。
初めに、過去10年の県管理河川で、浸水などの水害被害があった河川はいくつあるのか、また、その中で複数回の被害にあっている河川はあるのか確認します。
国土交通省の水害統計によると、10年前の平成26年から 令和5年までの10年間で河川の氾濫によって浸水被害が発生した県管理河川は17河川です。
また、その中で 複数回河川の氾濫が発生している河川は、小出川、境川、蓼川の3河川です。
なお、8月末の台風10号では、葛川や河内川で河川の氾濫により浸水被害が発生していますが、過去には、過去に葛川では平成25年に、 河内川では令和3年に氾濫による浸水被害が発生しています。
次に、台風10号の影響を受けた8月末の水害についてですが、県内の県管理河川での氾濫個所数や被害の状況を改めてご報告いただきたいと思います。
葛川、河内川、不動川、渋田川、大根川、金目川の6河川が溢水し、氾濫が発生しました。
いずれも人的被害はなかったものの、葛川では二宮町内の住宅地で約1㎞に渡って氾濫が発生し、町に確認したところ、床上浸水が41棟、 床下浸水が17棟、その他道路冠水などの被害が発生しています。
また、河内川でも、平塚市徳延の金目川に合流する付近の住宅地で氾濫が発生し、市に確認したところ、床上浸水が54棟、 床下浸水が34棟で、その他道路冠水などによる被害が発生しています。
その他4河川につきましては、氾濫が生じたものの、浸水被害の報告はありませんでした。
提供:二宮町
※佐藤も現地を視察しました。
葛川の様子
河内川の様子
氾濫個所の調査から、今回、溢水・氾濫した原因はわかっているのでしょうか。また、溢水・氾濫の再発防止のために県としてなにができるのか伺います。
今回氾濫が発生した葛川では、流域内にある二宮町消防本部の雨量計で、 河川整備の目標とする降雨である時間雨量50㎜を大きく上回り、最大60分雨量65㎜を記録しました。
氾濫は遊水を流す能力が小さい未整備区間で発生しており、今回の溢水は現在の施設の能力を上回る降雨により生じたものと考えています。
また、河内川についても、近傍のアメダス平塚観測所で最大60分雨量57㎜の降雨を記録しており、 葛川と同様に現在の施設の能力を上回る降雨により生じたものと考えています。
溢水・氾濫の再発防止については、県としては、まずは現在の施設の能力をできるだけ発揮できるよう、河床整理や河川内の樹木等の撤去を行うとともに、早期に未整備区間の改修を行い、災害の防止・軽減を図ります。
出水期まだ続いていく中で、今回被害のあった二宮町では、今年中に次の被害があるのではないかと心配する声もありますけども、 少しでも県民の不安の声に応えるべく、葛川については緊急対策などできる対策ないのか改めて伺います。
今回の氾濫被害を受けて、県では緊急的な対応として、 JR東海道本線の橋梁から上流の約600mの区間において、現在の河川の能力を最大限発揮できるよう、 河川内の樹木の伐採や草刈りを実施しました。また、護岸などの施設被害を防止するため河床整備を行って、今回洪水で河床が掘れた箇所の埋め戻しなどを行うなどの対策を行いました。
現在県が進めるこの葛川の河川改修 の完成によって、先ほども、葛川の流域は最大60分雨量65㎜を記録したと思いますが、この同規模の雨量を処理することができるようになるのか伺います。
※本県内では時間雨量60mmを超える雨は藤沢市や厚木市などでも発生している。
平成30年度に策定した葛川水系河川整備計画では、時間雨量50㎜を対象降雨として整備することとしています。
今回の台風による豪雨はこの対象降雨を大きく上回っており河川整備計画に基づく河川整備だけでは今回と同規模の降雨に対応することは困難であると考えています。
河川整備計画で想定している雨量をかなり超えていて、なかなか難しいというイメージを持っています。今回氾濫した箇所は、葛川の氾濫のボトルネック箇所ですが、 県の水防災戦略では、遊水地や流路のボトルネック箇所等の整備において、計画を前倒しして効果の発現を目指すと書いてあります。この前倒し箇所に選ばれる際の基準というのは何か伺います。
水防災戦略では、河川の対策として、治水効果の高い遊水池や 流路のボトルネック箇所等の整備といった大規模河川事業を計画を前倒しして重点的、集中的に進めることとしており、 策定時点ですでに事業中または事業着手の準備が整っている箇所を選定し、戦略に位置付けています。
続いて葛川の流域治水のプロジェクトについて、私もHPを見させていただいたんですが、この取組みからどのように流域の被害軽減の取組みが図られたのでしょうか。
そして、県内の2級河川の流域治水プロジェクトについてもどのような状況なのか伺います。
葛川流域は、令和3年8月に流域治水協議会を立ち上げ、 令和4年3月に葛川水系流域治水プロジェクトを策定し、被害軽減の取組みを進めています。このプロジェクトには、 上流域における防災調整池の整備など流域の取組みを位置付けていますが、現状では、河川内の堆積土砂の撤去や樹木の伐採など、主に河川の取組みを実施しているという状況です。
また、県内の2級水系では、葛川を含め11水計で流域治水プロジェクトを策定しており、 それぞれの流域を関係者とともにプロジェクトに基づく被害軽減に向けた取組みを進めています。
葛川の防災遊水池や先ほど冒頭の方で言われた河川整備を着々とやっていくということですが、このプロジェクト自体が効果を出しているのかというと、なんとも言えないイメージがあります。行政や県民、事業者の方としっかりと今回の事実は共有していく必要があると思います。
葛川水系のプロジェクトの取組みはいろいろ書いてはありますが、今後の河川整備もまだまだ時間かかるわけで、 すぐには防げる状況にはなく、何か新しく見つけて取り組んでいく必要があると思います。 そこで、葛川については、河川改修の前倒しと合わせて、雨水貯留施設の整備も検討していく必要もあると考えますが、どのように取り組んでいくのか伺います。
雨水貯留施設には、区画整備等による防災調整池や 下水道の貯留管などさまざまな施設があります。葛川の流域水プロジェクトには、区画整理等による調整池の整備等が位置付けられていますが、その他取組みについては現状では位置付けがありませんので、今後、流域治水協議会の場などを活用してさまざまな事例を紹介し、雨水貯留施設等の整備を促していきます。
《雨水貯留》
先程来、河川整備には費用や時間が非常にかかると思いますので、やはり河川整備だけではない、流域で災害を減らしていくことがさらに求められていると思います。
県の水防災戦略では、 流域の雨水貯留機能の拡大 、流水の貯留機能の拡大と書いてありますが、これに関してはどのような取組みをしているのか伺います。
流域の雨水貯留機能の拡大については、雨水貯留浸透施設の整備のほか、森林の保全、ための活用・管理、水田の活用などがあり、流域治水の一環として各流域の流域治水プロジェクトに位置付けて取り組んでいます。
また、流水の貯留機能の拡大としては、河川の遊水池の整備やダムの事前放流などがあり、河川管理者の県が取り組みを進めています。
流域によってはできることとできないことがあると思います。
続いて、雨水貯留施設の設置については、市町村の役割が大きい一方で、下水道事業による取組みが求められていると私は考えますが、 市町村が行う雨水対策の全般について、県としてはどのような支援を行っているんでしょうか。
県では、下水道を担当する市町村の職員の方に対し、 定期的に勉強会や意見交換会を開催しています。具体には、雨水対策にかかる計画策定のガイドラインやマニュアルについてわかりやすく解説したり、 雨水貯留施設の整備など雨水対策の取組み事例について情報提供するなどして、市町村職員の方の知識や技術力の向上を支援しています。
また、市町村の財政負担の軽減が図られるよう、雨水整備にかかる交付金制度の拡充や十分な予算措置が図られるように国に働きかけも行っています。
次に、国は、雨水管理総合計画というガイドラインを策定して、下水道管理者である市町村に計画の策定を促していると聞いています。
そこで、県内の市町村の策定状況はどのようになっているのでしょうか。そして、県としてはこの未策定の市町村に対してどのような働きかけを支援しているのか伺います。
雨水管理総合計画ですが、本県の政令市を除く30市町村の策定状況は、 横須賀市など5市1町において策定が完了していますが、まだ策定が完了していない市町村が多い状況です。 県としては、下水道主管課長会議の場や個別ヒアリングの場などを活用しまして、計画が策定されていない市町村に対して計画の必要性などを丁寧に説明し、早期の策定を促していきます。
また、今年度より、 計画が未策定の自治体を後押しするため、策定済みの自治体から、雨水対策を進める上での課題や どのような解決策を講じたのかなど、計画策定に役立つ情報を提供していただき、意見交換をする場を設ける取組みを新たに始めています。こうした取組みをとおして、 計画の策定が一層促進されるよう、引き続き働きかけていきます。
県の管理河川で溢水したけれど何か市町村でできないか考えられているというお話は聞いてはいますので、県として支援をしていただきたいと思います。
続いて、個人宅などで浸透桝設置などについて市町村が助成する取組みなどもあると思います。河川への流量をピークカットしたい河川管理者の県も、市町村の状況を把握して、市町村の取組みと連携していく必要があると思いますが、現状はどうなっているのか伺います。
※相模原市の例
浸透桝の助成https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/shisei/1026823/gesuido/1004549/1004556/1004557.html
個人宅などの浸透桝による貯留効果については、河川計画などに反映していないこともあり、 県はその設置状況等について全てを把握できていません。しかし、河川管理者の県としても、浸水被害の防止・軽減につながるこうした施設が増えることは望ましいと考えており、今後、流域治水協議会の中で こうした取組みを推進するよう市町村と議論していきたいと考えています。
東京都の23区内で浸透桝の設置が増えてきているという報道を見ました。都も補助制度で後押しをしているようでしたが、ぜひ流域治水協議会の中で共有を図っていただきたいと思います。
続いて、県としての雨水貯留の取組みということで、長野県では、例えば県立公園の駐車場に雨水貯留施設を設置しています。本県でも、遊水地や貯留施設などを私も過去に見させていただいたこともありますが、 これに加えてさらに何か取組めることはないのか確認します。
河川の遊水池の整備については、現在、県が河川管理者として重点的に整備を進めており、 今後も引き続き取り組んでいきます。また、流域における貯留施設については、多くは開発に伴い事業者が設置していますが、 学校や公園などの公共施設に市町が整備する事例もあり、今後、こうした取組みを流域治水協議会等で共有し、取組みを広げていきたいと考えています。
県としてできることはもっと進めていただきたいと思います。県の管理施設や未利用地、現在ある施設などでもできることはあると思いますので、各部局でもぜひオーダーしていただきたいですし、河港課にはそのメッセージは特に強く発信していただきたいと思います。
続いて、本県では、鶴見川などで、特定都市河川浸水被害対策法に基づき、特定都市河川及び特定都市河川流域を指定して、 流域を含めた総合的な治水対策を行っていると承知していますが、この法律の概要について伺います。
特定都市河川浸水被害対策法は、 著しい被害が発生する恐れがある都市部を流れる河川及びその流域について総合的な浸水被害対策を講じるため制定された法律です。特定都市河川流域では、流域内の住民や事業者は雨水を貯留、浸透させる努力義務が課され、また、開発行為などで雨水が地中に浸透することを阻害する行為を行う場合には許可が必要となるといった規制が生じます。現在、県内では、鶴見川水系、境川水系、引地川水系の3水系で指定されています。令和3年には、 流域治水の取組みを本格的に実践するため、対象となる河川が拡大されるとともに、著しい被害が生じる恐れがある区域に対して規制を行う浸水被害防止区域の指定制度などが追加されています。
※出典:特定都市河川パンフレット(国土交通省)
chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mlit.go.jp/river/kasen/tokuteitoshikasen/pdf/14.pdf
特定都市河川流域では、雨水が地中に浸透することを阻害する行為に対して貯留浸透施設の設置などの対策が義務付けられているということで、 治水対策に大きな効果があると思いますが、鶴見川水系、境川水系、引地川水系ではどのくらいの量の対策が行われたのか、伺います。
特定都市河川流域では、民間の開発行為において1,000㎡以上の雨水が浸透することを阻害する行為に対して貯留浸透施設の設置を義務付けています。
鶴見川水系では、平成17年に特定都市河川流域に指定されてから、約28万㎥の貯留浸透施設が設置されています。
また、境川水系や引地川水系では、平成26年に特定都市河川流域に指定されてから、境川水系で約18万㎥、 引地川水系で約6万㎥の貯留浸透施設が設置されています。
イメージとしては東京ドーム何杯分というのはわからないですか?
データを持ち合わせておりません。
《参考》
東京ドーム:124万㎥のため、3水系で東京ドーム約40%分
令和6年台風10号の降雨における遊水地への流入状況https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4i/bosai/yuusuichi/r6typhoon10.html
特定都市河川及び特定都市河川流域の指定をこの他の領域で適用していくことは考えられるのか伺います。
今後、流域治水を本格的に実践するためには、河川によっては 特定都市河川等の指定を検討していく必要があると考えています。しかし、指定によって土地利用にさまざまな規制がかかることなどを踏まえると、 法の適用にあたっては、流域の市町村の意向や意見をしっかりとお聞きするなど、関係者との十分な議論が必要であると考えています。
今は3水系ではありますが、今後可能性がある取組みだとは思います。全国でも適用している河川も多くなっていると聞いてまして、 法改正前には8河川だったのが今は25水系で335河川ということで、流域治水が進んでる中で必要な対策だとも思います。今お話のあったとおり市町村の意向もあるので、なかなか直ちに進められるものではないと思いますが、県としてもこうした昨今の状況を 鑑み、河川整備だけでは限界のある自治体などとよく情報共有していただきたいと思います。
最後に、今後、県管理河川での氾濫を防ぐためにどのように取り組んでいくのか伺います。
県管理河川の氾濫を防ぐために、引き続き 河川管理者である県が率先して流域治水の取組みを加速させていくとともに、 必要に応じ対策の強化についても検討し、今の県管理河川の氾濫を防ぐ取組みにしっかりと取り組んでまいります。
水防災に関して流域の雨水貯留機能の拡大や流域治水の取組みをここまで聞いてきました。貯留量というのはなかなか見えるものではないとは思いますが、流域治水プロジェクトを進めていく上で、やはり河川整備の限界を1つ示していると言いますか、 その中で流域ごとの貯留量なども目標として出していく方が、どれだけ流域で減らしていけるかということを共有できて、このプロジェクト自体も進むと思います。
例えば埼玉県では雨水条例を策定し、雨水貯留施設の届出を義務化しているお話も先日私も聞いています。やはり今後進める方向の中では、このような貯留量の目標や把握についてぜひ進めていただきたいと思います。
また、 この雨水貯留だけではなく、私は代表質問でグリーンインフラを取り上げましたが、いろんな方法を考えて、県として各河川の氾濫を防ぐ取組みを進めていただきたいと思います。