会議日:令和6年12月10日【建設・企業常任委員会】
流域治水の取組や河川の活用について
今回の代表質問で、「台風10号による河川の氾濫を踏まえた流域治水の取組み」の質問に対して、知事から、被災した地域で地域の関係者による検討会議を新たに設置すると答弁がありましたが概要を詳しく教えていただきたい。
県は、台風10号により氾濫した二宮町の葛川や、 平塚市の河内川などにおける災害を防止するため、地元の市や町の関係者とともに検討会議を立ち上げました。
この会議は、すでに設置している葛川流域治水協議会と金目川流域治水協議会にそれぞれ被災した地域の浸水被害対策を集中的に議論するための部会として設置したもので、 葛川流域の部会では県と二宮町・大磯町、金目川流域の部会では県と平塚市・伊勢原市がそれぞれ参画しています。
先日相模川水系の流域環境の保全を目指す桂川・相模川流域協議会が主催された流域治水をテーマとしたシンポジウムに参加しました。 講演の中で本川に対する支川での流域治水を進めるということで、支川ごとや、また小流域などのコミュニティごとで流域治水を実践していくことが重要であるということが述べられました。
また、山梨県の事例で、県管理河川のモデル小流域ごとに流域治水検討会を設置し、課題等を検証した上で、地域特性に応じた具体的施策のアクションプランを取りまとめ、確実な実行に向け、 フォローアップをしているという話もありました。
本県においてもこうした支川や小流域ごとの流域治水の取り組みを行っていくのか伺います。
●桂川・相模川流域協議会
https://www.katurasagami.net
本県では、現在、主要な水系で、流域ごとに流域治水協議会を設置し流域治水に取り組んでいますが、支川や小流域などのコミュニティごとの限られた地域で流域治水を実践していくことは、 関係者が少数であることなどから共通認識が取りやすく、早期に取組みを進める有効な手段の1つであると考えています。
こうしたことから、県は、先ほど答弁したように、早期に取組みを進める必要がある河川の氾濫が発生した地域に限定した部会を設置し、 集中的に議論を進めることとしました。今後は、この部会の中で得られた効果的な取組みや知見を 県全体の流域治水の取組みへと展開していきたいと考えています。
質問にあたって、県の流域治水、各一級水系などの流域治水協議会のホームページを見させていただきましたけれども、印象としては、 行政間のやり取りなどの取り決めがメインで、民間や県民に広げていくような具体的な活動がなかなか見受けられないように感じたところです。現状はどうなのか伺います。
流域治水は流域のあらゆる関係者が協働して取り組む治水対策ですが、 現状では、河川や下水道など治水に関わる施設を管理する国、県、市町村といった行政関係者が中心となって取組みを進めています。
県民の皆様に取組みを広げていくためには、水害のリスクや流域治水の取組みを自分ごととして捉え、主体的な行動につなげていくことが重要であり、県は、それを促すため、流域治水の考え方を説明するイベント「流域治水かながわ」を開催するなど、 流域治水に対する県民意識の向上に努めているところです。
第2回流域治水かながわ2023
そういったイベントを通じて広げていっていただきたいと思います。 流域治水の取組みを民間や県民に広げていくために機運醸成取組みが必要だと思いますが、 どのように取り組んでいくのか伺います。
県は令和4年度から、治水施設の見学会と合わせて 流域治水の考え方を説明するイベント「流域治水かながわ」を開催するなど、流域治水の気運醸成の取組みに積極的に取り組んできました。
これに加え、現在は、市町の防災講座などを活用し、流域の地域の水害の歴史や治水上の課題を学ぶ機会を作る取り組みや、防災教育の教材に流域治水の考え方を盛り込み、学校教育の場で活用するといった取組みも進めており、 今後も引き続き、あらゆる機会を捉えて流域治水の機運醸成に取り組んでいきます。
地域の防災講座や学校の防災教育、ぜひお願いしたいと思います。
流域治水というのは、英訳だと、「River Basin Disaster Resilience and Sustainability by All」と説明をされてるということです。日本語からでは見えてこない「by All 」という部分が、「みんなで」という意味が見てとれると思います。なかなか流域住民や企業などいろいろな方をまとめていくのは難しい課題であると思いますが、とはいえ、 浸透はさせていく必要もあると思います。
いろんな取組みを今後もやっていただきたいと思いますが、やはり各水系ごとに何か取り組んでいくことが必要だと思いますので、 引き続き検討いただきたいと思います。
続いて、こうした取り組みに加えて、国では、流域治水の推進にあたって環境分野の取組みも重要であるとして、自然環境の保全や創出などの防災以外の多面的な要素も考慮していくべきとして、 川底の幅を意図的に広げたり、ワンドを残すなど、多自然川づくりに取り組むことを推奨しています。
シンポジウムでもこの辺り一部説明がありましたが、現在の県の河川改修においてこうした工夫を促しているのか伺います。
これまで県は、河川の整備等にあたって、治水対策のみならず、生物の生育、 生息環境などの河川環境を保全、創出する多自然川づくりに取り組んできました。具体には、境川の上流部において、 洪水を早く流すために蛇行している河川を直線化するといった計画を、多様な河川環境を保全するために、現況の流れを尊重した計画に見直すなど、県内の多くの河川でさまざまな取り組みを進めてきました。
現在は引き続きこうした取組みを進めており、例えば相模川では、河川工事に際して、魚類の生息環境が回復するよう、 漁業協同組合のご意見を伺いながら、堆積土砂の撤去工事の際に川底を掘り起こしたり、大きめの石を配置するなどの工夫を行うこととしています。
今後、流域治水の対策を進めていくにあたっても、 治水のみならず、河川環境の保全、創出のため、引き続き多自然川づくりに積極的に取り組んでいきます。
神奈川県HP:https://x.gd/PHXXh
多自然川づくりの取組みについては、国では今年の5月に、「生物の生息、生育、繁殖の場としてふさわしい河川整備及び流域全体としての生態系ネットワークのあり方」として新たな取組みを示しています。具体では、これまでの多自然川づくりの目標を定量化して取り組むとしていますけども、県の多自然川づくりの取組みにもこうした考えを導入していく必要があると思います。
そこで、県は国の動向を踏まえて、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
多自然川づくりの目標を定量化することは、効果測定の明確化や 住民との協働を促進する上で有効であると考えますが、河川環境につきましては、河川や地域によって求められる水準等が異なり、 目指すべき項目や水準を明確化し、定量的な目標を設定することは大変困難となっています。このため、これまでは、多様な河床環境の保全や河川の連続性の確保など、河川環境の整備と保全に努めていくといった定性的な目標を掲げていましたが、今後国は多自然川づくりを一層推進するために、 河川環境の定量的な目標設定に向けて検証を行うと聞いています。県が管理する多くの中小河川では、現況の生物の分布状況や河川の流量などのデータも十分ではなく、国と同様に取組みを進めることは簡単ではありませんが、 県としても、こうした国の動向も注視しながら、より一層多自然川づくりを推進できるよう努めていきます。
「生物の生息・生育・繁殖の場としてもふさわしい河川整備及び
流域全体としての生態系ネットワークのあり方」(PDF)
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/seitai_network/pdf/honbun.pdf
今、ネイチャーポジティブというような考え方が民間や行政に広がっていると思います。 今、国の動向はやはり注視していくという流れだと思いますが、県も、これまで行ってきた多自然川づくりの実績や取組みがあると思います。できるところから実施していただきたいと思います。
次に、河川に日頃から親しむことが、生物の豊かさを知り、平時の水かさを知ることで 、災害時、台風などの危険性を学ぶことに繋がり、こういったことも、流域治水の機運醸成や自分ごと化の推進のために有効であると思いますけれども、 そもそも今の時代だと、川にはなかなか近づかない、活動しない危ないから、ということも多いと思います。
私の地元の厚木市では、今回、河川空間を活用した魅力ある水辺空間や賑わいの創出を目指していまして、相模川の中津川、小鮎川が合流する付近の河川敷で、こうした取組みの推進のために、県管理河川で初めて都市地域再生等利用区域の指定を令和4年11月に受けたと聞いています。そこで、こうした水辺空間の創出やその活用について県はどのように取り組んでいるのか伺います。
都市・地域再生等利用区域の指定(河川空間のオープン化)についてhttps://www.city.atsugi.kanagawa.jp/soshiki/gesuidosomuka/sagamigawamizubefureaikyoten/34942.html
河川の水辺空間の創出について、これまで県は、多自然川づくりや 町づくりと連携して取り組む川町づくりの一環として、川に親しむことができる親水施設の整備などに取り組んできました。 こうして創出された水辺空間は、現在、地元の方々などによりさまざまなイベントや野外教育などに活用されています。
例えば、鶴見川に整備した市ヶ尾水辺の広場などでは、定期的にNPO団体によるイベントとともに野外教室が開催され、 川や川に住む生物などと触れ合う機会を作っています。県は今後も引き続き水辺空間の創出に取り組むとともに、 こうしたイベント等の機会を捉え、流域治水の機運醸成を進める場として活用していきます。
https://www.ktr.mlit.go.jp/keihin/mizumasu/tour/04.html
河川の保全と活用は一体として取り組んでいく必要があると考えますので、 川と共存できる機運づくりに取り組んでいただくようお願いします。