会議日:令和7年3月5日【建設・企業常任委員会】
埼玉県の事故を受けた流域下水道における硫化水素対策と業務継続の取組みについて

今回、埼玉県で発生した事故は、硫化水素による下水管の腐食が原因と報じられています。この事故で下水道の使用が制限され、多くの方々の日常生活に支障を及ぼしています。
硫化水素は、下水管のみならず、処理場施設でも発生するものであり、下水道は、下水管と処理場が一体となってはじめて機能することを踏まえると、下水道施設全体で硫化水素による腐食対策に取り組んでいく必要があると考えます。
また、事故等により、下水道の機能に支障が生じた場合でも、その影響を最小限にとどめ、事業の継続や、早期の復旧を図るため、「業務継続計画」いわゆるBCPに基づき、日頃から備えておくことが大切です。
そこで、流域下水道における硫化水素対策と業務継続の取組みについて伺います。
※埼玉県の道路陥没事故を受けて本県の流域下水においても点検が行われました。
このたび、県が管理する下水道管(約174km)が埋設されている全ての道路の目視による変状調査、及び管径2m以上の全ての下水道管(約61km)の流下状況調査と路面下の空洞調査(深さ1.5mまで)が完了し、特段の異常はなかったとされています。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ws2/cnt/izi/kinkyutenken2.html

まず、埼玉県の事故で、硫化水素が下水管を腐食させたメカニズムについて確認したいと思います

コンクリート製の下水管の腐食は、下水の中にいる細菌により発生した硫化水素が原因と言われています。下水の中の細菌が下水に含まれる物質から硫化水素をつくり、気化した硫化水素が管の内壁に付着すると、別の細菌の働きにより硫酸に変化します。硫酸は大変強い酸であり、管に付着した硫酸がアルカリ性のコンクリートを溶かしてしまうというのがコンクリート製の下水管の腐食のメカニズムです。

硫化水素は下水管や処理場のどのような場所で発生しやすいのか確認します。

硫化水素は下水の流れが攪乱し、多くの空気と触れるような場所で気化しやすいと言われています。具体には、下水管ではポンプで圧送した先の掃き出し部や、大きな落差が生じる箇所などで、硫化水素が発生しやすいとされています。また、処理場では、最初に下水が流入する沈砂池や、下水を地下からポンプでくみ上げた先の沈殿池などにおいて発生しやすいとされています。

埼玉県八潮市で発生した事故でも、道路陥没した箇所の地下は落差があった場所だと報道では聞いています。そこで、本県の流域下水道においては、硫化水素が発生しやすい箇所がどのくらいあるのか伺います。

本県が管理する流域下水道の施設において、硫化水道が発生しやすい場所として認識している箇所は、下水管では、ポンプで圧送した先の掃き出し部が相模川流域下水道の左岸幹線の上流部などを9か所、落差が大きい箇所が酒匂川流域下水道の左岸幹線などで11か所あります。また、処理場では、最初に下水が流入する沈砂池が27か所、下水を地下からポンプで組み上げた先の沈殿池が50カ所あります。


このような場所では特に注意をしていただきたいと思います。
県では、硫化水素が発生しやすい場所について、どのような点検を行っているのか伺います。

硫化水素の発生しやすい場所では腐食が進みやすいため、下水管については下水道法で5年に1度の点検を義務付けており、管の内部にテレビカメラを入れて、内面のコンクリートが腐食して表面に鉄材が抜き出ていないか、鉄筋が抜き出しになっていないかなどについて詳細に調査しています。
また、処理場については特に規定はありませんが、機械を更新する際、下水を抜き、施設を空の状態にする期間があるため、その期間に施設の中に入り、コンクリートの腐食の状況などを点検しています。

八潮市の例では、落差があった場所が交差点であったと思いますが、事故が現に起きていますので、硫化水素が起きやすい要注意箇所として道路管理者や所在する市町などとも共有していく必要も感じています。
点検の結果、腐食が進んでいると判明した場合にどのような対策を行っているのか伺います。

下水管については、点検の結果腐食が進行していると判明した場合には、硫化水素がコンクリートに触れないよう、管の内部を樹脂製の部材で覆うなどの対策を実施しています。また、処理場では、劣化したコンクリートの表面にモルタルなどを吹き付け、正常な状態に修復した上で、さらに腐食を抑制する塗装を施しています。

地下深くに埋設されていることの困難さが推察されるところではありますが、しっかりとお願いをしたいところです。

埼玉県の事故では、流域に暮らす方々に自粛要請がなされ、下水道の使用制限を受けた人口は約120万人であったと聞いています。日常の炊事やお風呂、洗濯、お手洗いなどにも大きな影響が出たと思われますし、事業者の方はもっと影響もあったと思います。
また、自粛の解除に約2週間かかっていることや、流域下水道管が損傷したときに市の管理する雨水管も巻き込まれて壊れてしまったとも聞いています。埼玉県は、今後大雨で管内の水位が上昇する恐れがある場合に、再び活動の自粛を求める可能性があると発表しました。
本県では、事故や災害などによって下水の処理に支障が生じた場合に、下水道の使用を自粛するようなことを想定しているのかを確認をします。

県では、下水の処理に支障が生じた場合には下水道を利用する方々に使用を自粛していただくことも想定しており、平成26年3月に策定した流域下水道事業業務継続計画にその対策等を位置づけています。
なお、自粛をお願いする必要が生じた場合には、ホームページや広報紙などにより速やかに下水道を利用されている皆様にお伝えできるよう流域関連市町とも連絡体制を構築していきます。

コロナの時も「自粛」という言葉が出てきて難しい問題であったと思っています。人や事業者等によって自粛に対する考え方も違いますし、今回の埼玉県の事故の例でもいろいろな対応があったと思います。県としてそういったことも含めた発信や対応が必要であると思いますので、気に留めておいていただきたいと思います。

仮に県内で、下水道の利用者に自粛を求めるようなことが生じた場合は、早期の復旧が求められます。そのためには平時からの取組みが重要であると思いますが、県はどのような取組みを行っているのか伺います。

流域下水道業務継続計画には、災害や事故が発生した場合でも下水道の機能を早期に復旧させるため、資機材の備蓄や調達方法、工事を実施していただく緊急業者の役割分担など、応急復旧の体制について定めています。また、この計画に基づき、地元建設業協会をはじめ、処理場で使用している機器を製作している企業などと災害時の支援に係る協定を締結し、一日も早い復旧が行われるようバックアップ体制を整えています。

埼玉県の事故についていろいろな報道を見ていますと、下水をさらに流さないために、ポンプを使って別の管に流していくですとか、いろいろな対応をされています。このようなことも報道を通じて知った県民も多くいると思います。いずれにしても、今回の埼玉県の事例を研究または想定していただきたいと思います。
下水道は、県民生活を支える重要なインフラであり、今回のような事故や災害があった場合でも、その事業を継続させていく必要があります。そのために県はどのように取り組んでいくのか伺います。

仮に事故や災害があった場合でも、下水道事業を継続させていくため、この計画をより実効性のあるものにしていくことが必要です。このため、事故や災害により下水道施設にどのような被害が発生するのか、県民の皆様にどのような影響を与えるのかなど、具体的な想定に基づき、日頃から十分な訓練を実施しています。その上で、訓練で得られた課題などについて関係者と調整を図りながら、必要に応じて計画を見直し、いかなる場合でも下水道事業を継続していけるよう取り組んでいきます。

下水道は他のインフラと違って代替が効かないということも聞いていますし、そのため、今回下水道に関しては、国の指示もあったと思いますが、各自治体で点検を行うことも続いています。下水道は県民を支える重要なインフラということで今回の八潮市の例をしっかりと検証、そして把握をしていきながら、また、今回の質疑で事故や災害時の対応もしっかり決まっていることも確認できましたので、県民が安心して生活が送れるよう安全管理に取り組んでいただきたいと思います。
