会議日:令和7年3月7日【建設・企業常任委員会】
グリーンインフラの取組みと本県の街路樹の管理について

9月の代表質問で、令和7年に県や市町村の都市づくりの指針となる都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を見直すに当たり、新たにグリーンインフラの考え方を踏まえて基盤整備や土地利用に取り組むことを位置づけ、実施につなげていくとの答弁がありました。グリーンインフラの取組みに関連して、何点か伺います。
まず、整開保※への位置付けによって、どのように市町村は配慮していくことになるのか伺います。
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整開保=都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
都市計画区域の整備、開発及び保全の方針とは、一体の都市として整備、開発及び保全すべき区域として定められる都市計画区域全域を対象として、長期的視点に立った都市の将来像を明確にするとともにその実現に向けて、次のような都市計画の基本的な方針を定めるものです。(根拠条文:都市計画法第6条の2)
① 区域区分の決定の有無及び区域区分を定める場合はその方針
② 都市計画の目標
③ 土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
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都市計画法では、県が定める整開保に即しまして、市町村が都市計画に関する基本方針である市町村マスタープランを定めることとされています。市町村マスタープランの方にグリーンインフラの考え方を踏まえた基盤整備等の取り組みが位置づけられることで、個別の事業計画等へ反映されるなど、グリーンインフラの取り組みの一層の展開が期待されます。

一方、国は、「グリーンインフラ推進戦略2023」を踏まえて、さらなる取組の強化等を幅広く議論するため、懇談会を開催していると聞いています。国が議論している内容や、今後の見通しについて、わかる範囲で伺います。


国ではグリーンインフラの今後の展開を議論するために、有識者からなる懇談会での議論を、令和7年2月から開始しています。公表されている資料によりますと、令和5年9月に策定したグリーンインフラ推進戦略2023に基づきまして、その後の社会情勢の変化等を踏まえて、国民や企業に一層普及させる説明力の強化や目標、ロードマップの作成などについて幅広く議論するとのことです。今後、この懇談会での議論が重ねられ、令和7年夏ごろ、取りまとめが行われると聞いています。

代表質問の時も述べましたが、まだグリーンインフラの取組み自体の認知度が進んでいないことや、グリーンインフラ自体の評価方法とか、このあたりが課題だと思います。夏頃までに示されるとのことですけれども、本県としてもぜひ注視していただき、本県のグリーンインフラの取組みの評価、もしくは普及も合わせて行っていただきたいと思います。

続いて、グリーンインフラは防災や気候変動対応など幅広い効果を期待するものですが、例えば、緑化の取組みもあります。緑の効果はヒートアイランド現象などに効果があるだけでなく、景観の向上やストレス軽減、生物の多様性などさまざまな効果が期待できると言われています。さらにその具体の取組みとして、街路樹の管理があると思います。街中の街路樹は、例えば地元でも無造作に切られて残念であるという声や、逆に切ってほしいという声ももちろん聞いているんですけれども、街路樹の維持管理の状況を伺いたいと思います。
まず、当初予算で、「街路樹維持事業費」「街路樹維持管理費」がそれぞれ計上されていますが、はじめに維持事業費と維持管理費の違いなどについて伺います。

まず街路樹維持事業費は、主に街路樹の計画的な維持や整備を目的とした予算で、具体には樹木の生育を確保した上で、樹形などを考えながら行う剪定や、老木化した樹木の植え替えなどの業務に充てられるものです。
次に街路樹維持管理費は、比較的規模の小さい植樹帯にある低木の刈り込みや雑草の除草などを行うための予算です。

県土整備局の主要事業体系図の中で「みどり豊かで美しいまちづくり」とあります。この中に街路樹の維持事業費などがぶら下がっています。この「緑の豊かな町」について県がどう考えているのかということだと思っています。
そこで続いて、県が関係する街路樹関係の条例や計画はどのようなものがあるかを確認します。


街路樹に関係する条例について、県では、神奈川県が管理する県道の構造の技術的基準及び県道に設ける道路標識の寸法を定める条例を制定しており、第14条では、第4種第1級及び第2級の県道には植樹帯を設けることを規定しています。
具体に申し上げますと、人口が密集する都市部で、想定する交通量が多い県道を整備する場合に植樹帯を設け、街路樹を植えることとしています。
次に、計画ですが、道路の実施計画であります「かながわのみちづくり計画」において、街路樹の整備促進として。主に都市部における良好な公共空間の形成、沿道における良好な生活環境を確保するため、街路樹の整備を進めると定めています
かながわのみちづくり計画 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bd2/cnt/f7355/index.html
今年度改定を迎える。

県が管理する街路樹の本数や樹種などを確認します。
また街路樹の本数などの変遷も分かれば、合わせて確認したいと思います。

県が管理する街路樹の本数は、高さ3m以上で一本単位で管理している高木と呼ばれる街路樹についてお答えしますが、約47,000本管理しています。
また、樹種については桜が最も多くて約9,000本。椿が約7,000本。銀杏が約4,000本です。
街路樹の本数の変遷については、ここ数年間で、高木化や巨木化で放置すると倒木の危険がある街路樹を地元の皆様と調整して間引くなどした箇所もありますが、約47,000本という管理本数全体で見ると、ほぼ横ばいという状況となっています。

樹齢が進んだ木、倒木、伐採、そして植え替える樹種など非常に難しい課題だと思っています。昨今、自治体の方で街路樹の維持管理の指針を固めているところも増えていると聞いていますが、いろいろな悩みがあるのだと思います。
剪定の在り方について、剪定枝を切り詰めることが多いという指摘をいただくことがありあますが、どのような方針で行っているのか伺います。

県では景観への配慮が必要な市街地などの剪定について、剪定のスペシャリストである「街路樹剪定士」を活用し、街路樹の生育をしっかり確保しながら、それぞれの樹種にふさわしい樹形を整えることとしています。具体には、毎年の剪定業務において、街路樹剪定士が現地で街路樹の生育状況とともに、歩道の幅や沿道建物の配置状況など、街路樹の制約を確認した上で、数年後の目標樹形を設定し、その樹形に向けた剪定方針を決めて現地で剪定業務を行うというものです。

先ほど緑豊かなまちと言いましたが、剪定が少し強すぎて寂しくなってしまっているという声もあります。「緑豊か」をどのように位置づけていくのかということは、今後数字的なことも含めて、「道路緑化」という面で課題であると感じています。昨年、長野県を視察しましたが、弱い剪定で緑を街中に残す補助の仕組みを県として構築していると伺いました。県の管理する道路においても、補助は利用されているということで、長野県の場合は「緑被率」という形で管理の指針を持っているそうです。東京都は「みどり率」というまた独自のものをもっています。長い年月の中で、例えば数十年後数千本減ってしまったということになると、「緑豊か」というのは名前倒れになってしまう話にもなると思うので、ちょうど今グリーンインフラを議論されている間に、道路の緑についてもどのように効果を出していくのか考えていただきたいと思います。

2024年の本県の熱中症の搬送者数は過去最多であり、住居についで、道路上で発生しているということです。夏場に樹冠による緑陰が多いことは熱中症対策として有効であると思いますが、街路樹の剪定にあたって、こうした緑陰を考慮しているのか伺います。


緑陰の形成は街路樹の目的の一つですので、緑陰の形成も考慮しながら、毎年の剪定を行っています。一方で、街路樹の維持管理にあたっては道路利用者の安全を確保するため、街路樹の生育状況をきちんと把握して、落ち枝や倒木などが起こらないようにすることも重要ですので、これらのことを総合的に勘案して、樹形を計画して剪定を行うようにしています。

県道などの街路樹の植樹、維持にあたって、一般的に地域や所在自治体とどのようなやり取りを行っているのか確認します。

地域とのやり取りですが、まず植樹については、例えば、老木化して倒木の危険のある樹木を植え替えたりだとか、また、道路整備に伴い、新たに街路樹を植える際には、地元の住民や市町村と意見交換を行いながら、樹種を決定しています。
維持管理については、毎年の剪定業務を行う際に、作業を行う区間や期間などを記したお知らせを作成し、作業を行う前に地元の皆様にお配りするようにしています。

植樹にあたって地元とのコミュニケーションをとることは非常に大事だと思います。今後ともよろしくお願いしたいと思います。
続いて、街路樹の管理についてどのような課題があるか伺います。

まず、県では高さ3m以上の樹木が約47,000本と多くの街路樹を管理しており、毎年定期的な剪定を行うとともに、パトロール等で枯れた樹木を発見した際には速やかに対処するなど、適切な街路樹の管理に努めているところです。しかしながら、街路樹は生きている植物ですので、高齢化して巨木化、病気の発生、幹の内部に空洞化が起こるなど、近い将来倒木などが心配される樹木も多くなってきています。
また、年によって毛虫などの害虫が大量に発生したり、台風などの暴風により枝が折れたり倒木したりするなど、道路利用者や沿道の住民に予期せぬ被害が生じたりすることもあります。
さらに近年では、夏の暑さが激しくなり、草木の伸びるスピードが早くなっています。想定していた時期よりも早く通行する車両に接触するほどに枝葉が伸びてしまうことも多くなっています。

いろんな課題があって、例えば道路の根上がりなども課題だと思います。
次に、街路樹の管理について、民間事業者へ発注にあたっての工夫は何か行っているのか伺います。

まず、県では平成21年度から、市街地などの街路樹の剪定業務の発注について街路樹剪定士を活用することとし、この街路樹選定士が街路樹の生育を確保しながら、樹形を整えるよう業務計画を立て、剪定を実施することとしています。
また、平成27年度からは、樹木の生育状況の診断や治療にかかる専門家、「樹木医」を活用した街路樹の診断にも取り組んでいます。具体には、樹木医が街路樹1本1本について、5年ごとに現地で健康状態を確認し、折れ枝の切除等や老木化した街路樹の伐採など的確な診断を行い。この診断結果をもとに速やかな対応を行うことで、倒木による事故を未然に防ぐよう努めています。
【参考】
他、樹木の伐採に関しては、予算成立後の発注であると、近年は草木の伸びが早く、7~8月頃で繁茂した草木の剪定することになるため、ゼロ県債での発注も令和6年度から一部土木事務所で始め、(R6年11月補正などで実施 4億3150万円)早い時期の剪定を行っている。

県の中での明確な方針が非常に大事だと思いますので、そういうものも含めてやっていただきたいと思います。
最後に街路樹の適正な維持管理について、今後どのように取り組むのか伺います。

街路樹の管理にあたっては、倒木や落ち枝などの事故を未然に防いで、道路利用者の安全安心がきちんと確保されていることが何よりも重要と考えています。こうした中、近年、樹木の生育するスピードが速くなっている状況もあり、県は令和6年度の街路樹にかかる予算を大幅に増額しています。この大幅に増額した予算をもとに、必要において剪定の回数を増やすなどしています。
【参考】
R5→ R6→ R7
2.7倍→1.23倍
R6 10億2400万円→ R7 12億6500万円
県としては、こうした毎年の剪定業務、それから5年ごとの診断を引き続き着実に行い、道路利用者の安全安心をしっかり確保しつつ、その上で、緑陰や都市景観の形成といった街路樹の目的がきちんと発揮されるよう適切な維持管理に努めたいと考えています。

街路樹についてさまざまグリーンインフラと絡めて伺いました。海外の都市では、街の緑を残す取組みとして、アーバンフォレスト戦略に取り組まれている例があるそうです。例えば樹木でどの程度覆われているかなどの指標「樹冠被覆率」や樹木の保護区間を定めたり、アメリカではI-Treeという街路樹の試算的な価値の評価やデータ化することで市民が情報開示できる取組みがあると聞いています。
日本でも東京や大学の研究機関などで、社会的なさまざまな効果について定量化できるように現在取り組まれているという話も聞いています。緑の多さは、歩きやすさや、人が街中に「出る」要素にも繋がり、街の活性化や不動産価値の向上にも繋がるという研究もあります。全国的に街路樹が減少している中、地域の価値を高めるためには、街路樹の管理について行政だけではなく、地域や事業者、コミュニティなどさまざまな主体との連携を行い、地域や場所ごとに議論していくことが今後必要になると思います。すでに県では、かながわ街路樹パートナー制度を実施していると聞いていますので、さらに進めていただきたいと思います。
一方で、自治体でも今まさにインフラの老朽化が議論されているということで、伐採や樹種転換や更新などとともに管理コストを下げる管理計画を立てる都市も多いと聞いています。一昨年、県管理道路で街路樹を伐採されたと思われる事件や報道もありましたが、街路樹の多面的な価値が社会でさらに理解されていく必要を感じています。
県も街路樹の求められている役割の変化なども十分注視していただき、街路樹の維持管理に取り組んでいただきたいと思います。
