令和7年

1② 中長期的な森林資源循環に向けた取組みについて【令和7年第2回定例会】

会議日:令和7年6月24日【令和7年第2回定例会】

1.水源地域の未来に向けた取組みについて

中長期的な森林資源循環に向けた取組みについて

平成19年度から始まった「かながわ水源環境保全・再生施策大綱」も18年が過ぎました。この18年間で、個人県民税の超過課税として徴収した水源環境保全税によって県内の森林整備は加速的に進み、水源の涵養や山地災害の防止といった森林の公益的機能は大きく向上しているとされています。

一方で、神奈川県内では、柱材や板材に利用可能な時期を迎えた、いわゆる主伐期に入った高齢な森林が多いにも関わらず、流通している県産材のほとんどが主伐材ではなく間伐材であり、木材の活用を支える木材生産の仕組みが十分ではないように感じています。

県は、公共建築物への県産材利用を以前から進めてきましたが、令和5年度に整備された公共建築物に使用された木材に占める県産材の割合は、17%弱でした。本来であれば、水源環境保全税によって整備された県内の森林から出る県産材がもっと活用されるべきではないでしょうか。

先日埼玉県で行われた全国植樹祭に参加して参りましたが、埼玉県内の利用可能な人工林は8割であり、木材利用の拡大を図る「活(かつ)樹(じゅ)」が繰り返し表明されていました。

本県においても、横浜市をはじめとした都市部では、森林環境譲与税を活用しての小学校の木造校舎への建替えや、内装の木質化等に取り組んでいることから、木材の需要については、今後、増加が見込まれると私は考えます。

県では、林道から近い人工林では資源循環により健全な人工林を維持していくこととしているのは承知しています。それならば、主伐による木材生産にも力を入れ、県民にもっと多くの県産材を消費してもらうことが重要であり、そのことで、県民の水源地域に対する理解も進むと考えます。

令和9年度以降の水源環境保全・再生施策に係る新たな計画のたたき台では主伐に伴う「植替えの実施」が掲げられていると承知していますが、今後、計画的な植替えを着実に進めることで、中長期的な森林資源循環を実現していく必要があると考えます。

そこで、県として、中長期的な森林資源の循環をどのように実現していこうと考えているのか、環境農政局長の見解を伺いました。

環境農政局長答弁

県は、これまでの水源環境保全・再生施策の中で、荒廃した人工林を間引く「間伐」を重点的に実施してきた結果、下草の回復などにより、水源かん養機能は向上しました。

一方、まとまった面積を伐採する「主伐」を伴う植替えについては、水源かん養機能を一時的に低下させるため実施してこなかったことから、県内の人工林は高齢化が進んでいます。

高齢の人工林は、台風や豪雨等の影響を受けやすく、倒木のリスクが高いため、災害時には広範囲にわたる公益的機能の低下が懸念されます。

そこで、令和9年度以降の水源施策では、道から近い人工林の植替えを新たな事業に位置づけ、多様な林齢からなる健全な人工林に誘導していきます。

植替えにあたっては、これまでに高めてきた公益的機能を維持するため、小規模に分散しながら中長期的な視点を持って計画的に進めていきます。

併せて、主伐に伴い増加する木材の流通に必要な支援策を検討し、森林資源循環が円滑に進むよう努めます。

県は、このようにして、道から近い人工林の植替えを着実に進め、中長期的な森林資源循環の実現に向けて取り組んでまいります。

再質問

道から近い人工林は、良好な状態を維持するために植替えを行っていくとの答弁がありました。植替えにあたっては、花粉発生源対策にも対応するため、植栽する無花粉苗木等の増産が必要と思いますが、植替えに必要な苗木をどのように確保していくのか再質問を行いました。

県HPよりhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/xp8/shinrinsaisei/kahunhaeeseigen.html

環境農政局長答弁

種子から育てる無花粉苗木の生産量を増やすことは、マンパワーの面から困難なため、挿し木による苗木生産を増やすこととしており、今年度から、挿し木用の枝を採取する、専用の無花粉スギを育てる採穂園の造成に着手します。

併せて、県の事業に必要な苗木をより確実に確保するため、植替えに必要な本数の苗木を委託生産する仕組みの導入も検討していきます。

これらの対応により、植替えに必要な無花粉苗木を生産、確保していきます。

意見

今後植え替えを含めた森林資源循環を進めるにあたり、例えばトレーサビリティ、県産材でもどこの木材を利用したかまで分かれば、都市部と水源地の対話や理解、県民の納得感に繋がります。

また、植え替えについて新たな方針が示されましたが、繰り返しになりますが、植えることから始まり、主伐までの一貫した木材生産の方向性や出口戦略までしっかり示していただくよう求めました。

神奈川県議会議員:佐藤けいすけ

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