令和7年

風水害等対策の取組みについて(流域治水の取組みを中心に)【令和7年第3回定例会】

会議日:令和7年10月2日【安全安心・未来環境特別委員会】

佐藤けいすけ

水防災戦略における流域治水の位置づけや取組みについてどの程度進んだと認識しているのか確認します。

防災企画担当課長

流域治水は、流域全体を俯瞰し、関係者が協働して取り組む水害対策の基本的な考え方となりますので、流域治水の考え方を踏まえ、令和5年3月水防災戦略を改定しています。具体には、流域に関わるあらゆる関係者が協働し、流域全体で災害を軽減させる治水対策への転換が急務になっている旨を、「①水防災戦略の趣旨」に記載するほか、流域治水で取り組む対策のひとつとして、流域の雨水貯留機能の拡大、流水の貯留機能の拡大、河道の流下能力の維持・向上などの対策を実行することを「⑤対策の内容」に記載しています。また、水防災戦略に基づく取組状況ですが、ハード対策については、遊水池や流路のボトルネック箇所等の整備などに取り組んでおり、着実に進んできていると認識しています。さらにソフト対策については、かながわ防災パーソナルサポートなどにより、緊急度の高まりに応じたタイムリーな注意喚起や、県内全域に対する適切な避難行動の呼びかけを行うといった情報受伝達の充実強化に取り組めていると認識しており、水防災戦略に基づく取組みの成果は着実に表れているものと考えています。

神奈川県水防災戦略
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/58424/r5.pdf

LINE公式アカウント「かながわ防災パーソナルサポート」
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/line_bousai/ps.html

佐藤けいすけ

続いて、県庁内の連携についてどのような取り組みをしているのか確認します。

河港課長

流域治水の推進に向けては、庁内における分野を横断した連携の強化を図るため、河川・農林・教育・ まちづくりといった関係部局で構成する「流域治水ワーキング」を令和3年度に設置しました。この流域治水ワーキングでは、流域治水プロジェクトに位置付けた取組みのフォローアップや充実強化に向けて、他の都道府県の先進事例をもとに実施に向けた課題などについて議論を行っています。

佐藤けいすけ

流域治水ワーキングにはすべての局が入っているのでしょうか

河港課長

現時点でワーキングに参画しているのは県土整備局、環境農政局、教育局の各主管課となっており、すべての局が参画しているわけではありません。

佐藤けいすけ

流域治水の取組みは県民や企業など多様な主体に如何に取り組んでもらうかが鍵となると思います。流域治水を企業へ普及させていく取組みについてどう取り組んでいるのか確認します。

河港課長

流域治水を進めていくためには、県民、企業など、流域内のすべての関係者が水害リスクや流域治水の取組みを自分事としてとらえ、主体的な行動につなげていただくことが何よりも重要です。そのため県では県民のみなさまを対象として治水施設の見学と併せて流域治水の考え方を学ぶイベント「流域治水かながわ」の開催や、市町の防災講座を活用した流域治水の普及啓発に取り組んでいます。また国土交通省では、流域治水に取り組む企業や流域治水の取組みを支援する企業等を「流域治水オフィシャルサポーター」として認定して、その取組みを幅広く周知しています。今後はこうした国の動向にも注視しながら企業への更なる普及についても検討していきます。

神奈川県HP「流域治水」について
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/f4i/cnt/f3747/ryuuikichisui.html

国土交通省「流域治水オフィシャルサポーター制度」
https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/supporter.html

佐藤けいすけ

令和元年の台風15号では、県内の中小企業に大きな被害があったと聞いており、その後の台風19号でも川崎市の多摩川沿いなどにある多数の町工場で、大きな被害があったことから、被災した中小企業の復興を支援するため、国と県が協調して10月補正予算と11月補正予算で中小企業・小規模企業復旧支援事業費補助を措置したと承知しています。現在、被災企業の事業は再開されていると思いますが、この事業によって補助した中小企業の数と補助額について確認します。

中小企業支援課長代理

令和元年の台風15号及び19号により被害を受けた中小企業の早期事業再開を支援するため、被害を受けた事業用建物や機械設備等の復旧整備に要する経費に対し、市町村を通じて補助を行いました。 台風15号では264社に対して21億2,573万円を、台風19号では189社に対して11億4,043万円をそれぞれ補助しました。

令和元年度10月補正予算の概要
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/3847/10hokisyahatu2.pdf

令和元年度11月補正予算案の概要
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/7093/r011121_02_.pdf

佐藤けいすけ

その後も中小企業・小規模企業復旧支援事業費補助のような補助事業を実施したことがあるのか、実施したことがあるのであれば、それらの被害の実態〈補助自治体、被害件数、被害額、補助額〉、また、防災・減災の取り組みなどをしているのかも合わせて確認します。

中小企業支援課長代理

令和元年度に実施して以降、幸いなことに中小企業・小規模企業復旧支援事業費補助を実施したケースはありません。

佐藤けいすけ

先ほど川崎の町工場が被災したと伺いましたが、河川沿いなどで支援した企業だけ取り出して把握はしていますか。

中小企業支援課長代理

市町村単位で被害額や補助した額、補助企業数は把握していますが、 河川沿いや海沿いといった条件での抽出はしていません。

佐藤けいすけ

今の気候変動の時代、また被災するかもしれない、ということで言うと、税金を使って支援をしていますので、それによって復興した企業さんも今後減災や防災につながるような取組みをしていただくことは必要ではないかと考えます。ここはぜひ産業労働局としてしっかり受けとめをしていただきたいと思います。

続いて、企業のBCPの策定率を上げるようにするために、企業に防災・減災の取組みを紹介していくことを進めるべきではないかということを常任委員会でも提案をしていますが、例えば、「雨庭」や「雨水貯留施設」、「浸透桝」など企業が取り組めるメニューを積極的に紹介していく必要があるのではないかと考えますが見解を伺います。

河港課長

流域における貯留機能の向上に向けた取組みとして、一部の市町では雨水貯留タンクや浸透桝の設置に対して補助制度を設け取組みを推進しています。具体には、昨年の台風10号で葛川が氾濫した二宮町では、今年度から一般家庭や事業所などを対象として雨水貯留タンクの設置に対する補助を開始し、9月時点で144件の申請があったとのことです。今後はこうした企業が取り組むことができる対策を流域治水協議会の場で他の市町にも紹介して流域対策の推進に向けて取り組んでいきたいと考えています。

佐藤けいすけ

続いて、ハード面について、治山ダムの設置目的について確認します。県内の治山ダムの設置件数及び令和7年度の新規設置予定数について伺います。さらに、既設治山ダムの老朽化対策の考え方についても確認したいと思います。

森林再生課長

治山ダムは荒廃した渓流の勾配をゆるくすることで安定した勾配を導き、土壌侵食の拡大を防止することにより下流への土砂の流出を抑止することを目的に設置するものです。これまでに県内で設置した治山ダムの数は、台帳により管理している数としておよそ5,700基です。令和7年度に設置予定の治山ダムは14基となっています。既設治山ダムの老朽化対策については、令和2年度までに治山ダムの健全度調査を行い、補修等の対応が必要と判断された箇所の内人家に近いなど緊急性の高い箇所から順次対策をしています。

佐藤けいすけ

昨年の台風により、2級河川の葛川で浸水被害が発生しましたが、その被害箇所より上流の支流における、治山ダムの設置状況について確認します。

森林再生課長

葛川の上流の4本の渓流で合計41基の治山ダムを設置しています。

佐藤けいすけ

今回葛川を取り上げましたが、先日大阪府が取組みを始めた「流域治水対策ダム」について伺ってきました。このダムの目的は下流域の洪水軽減を図っていくことと、すでに設置して老朽化した治山ダムを改良することで流量低減を図っていく取組みでした。このことから、森林部局として流域治水に貢献していこうという意思を感じたところです。これはひとつの例ですが、ぜひできることを検討していただきたいと思います。

大阪府の「流域治水対策ダム」設置予定箇所
佐藤けいすけ

続いて、ソフト面について、デジタルを活用して、本県の流域治水を深めるべきと考えますが見解を伺います。

河港課長

各河川の流域については、県HPで公開しています流域治水プロジェクトで確認することができますが、デジタルを活用して流域治水の対策の効果や、水害リスクの見える化を図ることは大変重要と考えていますので、国や他の都道府県の動向を参考としながら検討していきたいと考えています。

佐藤けいすけ

流域治水は大学や学校との連携という点で少し確認しますが、例えば大学との連携については、流域をケーススタディなどのかたちで学生と先生でまわって地域と連携を深めていきながら流域治水を浸透させていくとことができると考えています。また、学校の方では環境教材で流域治水を学べるような取組みを公立学校などで進められていると思いますが、どの程度活用されているのか確認します。

河港課長

流域治水を推進していくにあたり、大学などの教育機関との連携は重要であると考えています。こうした中、県では若い世代への流域治水の普及啓発の取組みとして、小学校の社会科の副教材である「わたしたちの神奈川県」が令和6年度に改定される際に新たに流域治水の取組みを記載しました。

わたしたちの神奈川県 
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/r5k/watakana/r1_watakana.html

令和6年12月10日建設・企業常任委員会「流域治水の取組みや河川の活用について」

佐藤けいすけ

ソフト面として今後も必要となってくる取組みだと思いますので、引き続き連携をとっていただきたいと思います。先日見た記事によると、神奈川県と県警3者で山岳遭難の防止の協定を結んでいるYAMAPさんが、流域地図というものを作っているそうです。この流域地図というのは、例えば、私の地元は相模川が流れていますが、この流域を辿っていくと富士山のところから流れてきていることが見て取れるようになっていまして、最近は小学校の場所なども載せられるように機能強化されたということです。こういった民間との連携も非常に有効と考えますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

また、先日大阪府に伺ったときには京阪電車の中でデジタルサイネージというかたちで流域治水をアピールされており、ソフト対策でもさまざまできることがあると思いますのでぜひお願いします。

佐藤けいすけ

続いて、水源施策の中での流域治水について伺います。水源施策の基本計画では気候変動における自然災害の頻発化・激甚化への対応として、当初は予期し得ない課題に対応するとしています。新たな課題に対応していくとしていますが、どのようなものがあるのか確認します。

水源環境保全課副課長

自然災害の頻発化・激甚化への対応については、現行の施策で進めてきました森林の水源涵養機能の向上に向けて、水源の森林づくり事業における間伐等の森林整備や、水源林の基盤整備などの土壌保全対策に引き続き取り組んでいくことを考えています。また、森林整備にあたっては、伐採した間伐木等が、 下流に流れ出さないよう雨水が集まる沢付近で流木対策等を考えています。

佐藤けいすけ

これまでの水源施策による自然災害対策としての効果をどのように認識しているのか、また次期計画において、どのように強化していこうと考えているのか伺います。

水源環境保全課副課長

条件が全く同じではないため正確に比較することはできませんが、過去の気象災害と比較して降水量が増えているにも関わらず森林の被害箇所が大幅に減っているというデータもあります。適正に森林整備を行うことで土砂の流出や崩壊防止などの機能が一定程度発揮される効果はあると考えます。次期計画については、引き続き流木対策を行いながら、これまでと同様に森林整備を進めていくとともに、水源林の基盤整備の土壌保全対策に取り組み、森林がもつ保水力を高め緑のダムとしての機能を高めていきたいと考えています。

また、県が整備後に所有者に返還した森林や集落周辺の里山林においてもこれまで高めてきた水源涵養などの公益機能を持続的に発揮していくため、新たに土壌保全対策に取り組んでいきたいと考えています。

佐藤けいすけ

そもそも水源環境施策において流域治水はどのような位置づけになっているのか確認します。

水源環境保全課副課長

水源施策は、良質な水の安定的な確保を目的として間伐等の森林整備を行うものです。一方、流域治水は水害や土砂災害の被害軽減を目的としており、県民のいのちを守るために治山ダムなどのコンクリートなどを使った施設を整備して森林の維持造成を図る事業などもあります。このように目的や事業の考え方が異なるため、水源施策に流域治水は位置づけていません。

佐藤けいすけ

次期計画では、都市部との交流について書かれていますが、上下流という視点はどうなのでしょうか。下流への洪水低減という意味では、上下流の交流を深めることで水源を理解していく視点もあると思いますが伺います。

水源環境保全課副課長

次期水源施策は、県民生活に必要な良質な水の安定的供給を目的としていることから、都市部への水源施策に関する理解促進は重要であると考えていますので、新たな計画では都市部住民との交流に取り組んでいきたいと考えています。具体には都市部住民に実際に水源地域へ訪れていただき、水源施策の現場見学や森林体験の参加していただくことを考えています。また、水源施策で森林整備に取り組むことで、水源涵養だけでなく、間接的な効果として土砂の流出や崩壊の防止、洪水の緩和など減災にも役立つと考えていますので、下流部の住民の方にも交流事業にご参加いただき、水源への理解を深めていくことも重要と考えています。

佐藤けいすけ

いろいろな部局で取り組んでいることを確認してきましたが、それぞれ流域治水にもっと取り組める余地がある印象を受けました。やはり河港課だけで進めるものではないと思いますので、風水害を減らすという点からもぜひ各部局で強く受け止めていただくことを求めます。

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