(1)日 時 令和5年4月27日(木)午後1時から4時まで
(2)場 所 球磨川中流域から下流の被災箇所(八代市吉田町を中心に瀬戸石ダム、
鶴の湯旅館、荒瀬ダム跡、坂本駅、坂本道の駅等
(3)対応者 やっちろドラゴントレイル 吉田代表
(球磨川豪雨災害ボランティアグループ チームドラゴン)
(4)調査概要
《やっちろドラゴントレイルの活動》
吉田代表は、国道219号が寸断されている中、山中のトレイルを進み誰よりも早く被災地に入り状況をレポートし、土木関係者の貴重な情報源となりました。
その後吉田さんが代表を務める「やっちろドラゴントレイル」のレース実行委員会は、ボランティア組織「チームドラゴン」を結成し活動をスタート。
地域のシンボル的な存在である鶴之湯旅館をボランティア拠点にするため地下室と1階の瓦礫を撤去し泥のかき出しを始めました。
引き続きの雨で国道がさらに崩落したため、地元土木業者による復旧作業で坂本地区まで大型車両が入ることができるようになるまで、被災地入りする交通手段、飲み物と食料を自ら調達するなど機動力に富んだトレイルランナーの特性がフルに発揮されました。
翌月開催予定であったレースは中止したが、8月9日当日に76名ものボランティアが集まり、坂本町の8拠点に分かれてチームドラゴンは活動を実施。
手探りで始まった支援作業は次第にその輪を広げ、12月までの約半年間に、57件の家屋復旧作業に延べ1200人が携わりました。
コロナ禍による中止も経た2022年8月やっちろドラゴントレイルは「豪雨災害復興祈念」大会として復活を遂げ、2023年3月には球磨川豪雨災害の復興を後押しする大会「球磨川リバイバルトレイル」も開催しました。
《被災箇所の状況》
◆瀬戸石ダム
電源開発が管理するダム。球磨川の洪水時ダムに接する国道から下流域に水が流れていったとされ、瀬戸石ダム自体も発電施設やダムの橋脚がずれる等があった。2022年に再開している。球磨川中流域から(特に瀬戸石ダムの直下)は被害の度合いが強いとのことで、スポットごとに説明を受けた。
瀬戸石駅には、駅前に一軒人家があり洪水に押し流された。吉田代表の知り合いが住んでいたそうだが、災害当日は所用で離れていたため助かったという。
◆鶴の湯旅館
洪水時の避難状況と、チームドラゴンがボランティアで被災した旅館の土砂の搬出などをした一連の経緯を伺った。
球磨川流域沿いの人家等は現在嵩上げを求められているため、旅館自体も嵩上げをしなければならず、その嵩上げに数千万の費用が必要であるという。
またその際に営業を1年近く停止しなければならない。
◆坂本駅
坂本町は八代市との合併する前は坂本駅近くに役場庁舎などがあったが、ほとんど全ての建物が流された。球磨村~坂本町などは大きな国道が一本しか通っていないため、外部からの車両のアクセスが困難で、チームドラゴンの方は山道を越えて、集落の様子を伝えたという。
◆道の駅さかもと
災害時に洪水に飲まれ、復興していた道の駅さかもとを見学。
被災時の建物は営業を停止しており、4月から仮設店舗で営業している。
《質疑応答》
問 地元の清川村は上流域の水源地で、水を送り出しているという意識が高いが、なかなか伝わらない。下流域の人に上流域の感覚をどう醸成するか、ものすごく難しい。
答 都市生活が当たり前になっていると思う。災害が来るとこうなる、という言い方も煽ってしまうことになる。SNSの発信も難しい。でも関心は持ってほしい。またあのときの雨が今年降るかもしれない。
問 今年の梅雨も何事もなく過ごせるように、1年1年ですね、本当に。
答 工事が始まれば少し安心できる。それまでは何が起こるか不安。線状降水帯は夜激しくなるというデータも出だした。夕方はパラパラ降る程度だったのに、夜になったら豪雨というトラウマもある。
問 シカ柵は神奈川県が走りと聞いている。トレイルランナーがシカ柵を設置しているのは聞いたことがない。
答 2021年から始めた。ここからの道はやぶ漕ぎどころじゃなかった。ランナーの仲間で整備した。球磨川流域復興に向け本当にちっぽけだけどひとつの道しるべになる。
【考察】
「狭隘部に存在するダムの存在が、洪水の力を増大させた」との意識が住民に根強くあります。この球磨川においては瀬戸石ダムや荒瀬ダムのほか川辺川ダム計画に対しても強く感じました。
ダムは様々な機能が存在しますが、歴史的な経緯などからさまざま検討していくことが必要です。土地活用、利水の在り方などから、一筋縄に行かないことが多々あります。
球磨川流域のダムが果たす役割と地域住民にとっての最善な方法で進むことを祈ります。
幹線道路である国道が洪水によって分断されていたところを、チームドラゴンの方は山道を越えて、集落の様子の第一報を伝えたことは、有識者の方においても評価する声があり、地域振興のための山岳イベントのコミュニティが果たした役割は非常に大きいと感じました。
今後も人口減が進む中で、集落における災害時の担い手も少なくなる中、こうした山岳コミュニティの存在を行政は評価をした上で、連携を取ることが求められると感じました。