(1)日 時 令和5年4月28日(木)午前9時から10時30分まで
(2)場 所 熊本県庁(熊本県 企画振興部 球磨川流域復興局)
(3)対応者 熊本県 企画振興部 球磨川流域復興局
課長補佐 河野様、流域治水グループリーダー 森本様
(4)調査概要
《くまもと復旧復興有識者会議》
令和2年8月29日有識者会議を開催。球磨川流域の治水と振興について全国的モデルを創出するほどの覚悟を持ち、単に水害からの復旧を求めるのではなく、緑豊かな地域の特性を生かした流域総合振興としての熊本独自のグリーンニューディールが提案された。
《令和2年7月球磨川豪雨検証委員会》
令和2年8月25日にさまざまな観点から検証が行われた。
洪水のピーク量を推定精査を行った結果、河川整備基本方針の基本高水のピーク量(人吉地点7,000㎥)を上回る流量であり、仮に川辺川ダムが存在した場合の効果を算定したところ、現行の川辺川ダム計画だけでは全ての被害を防ぐことはできない結果となった。
《住民等のご意見・ご提案をお聴きする会》
令和2年10月からの約1ヶ月で計30回開催し、延べ467名の意見を聴取した。
《球磨川流域の新たな治水の方向性の表明》
令和2年11月19日、熊本県知事は令和2年7月豪雨による甚大な被害を受けた球磨川流域の治水の方向性として、河川の整備だけでなく、遊水地の活用や森林整備、避難体制の強化を進め、さらに、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していく「緑の流域治水」であると考え、その上で、「緑の流域治水」の1つとして、住民の「命」を守り、さらには、地域の宝である「清流」をも守る 「新たな流水型のダム」を、国に求めることを表明した。
▶球磨川流域の新たな治水対策 ~ 緑の流域治水で命と清流を守る ~
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/206/85991.html
《球磨川水系流域治水プロジェクト》
令和3年3月30日に公表。
《河川整備計画の作成》
1級河川で唯一策定されていなかったが、令和4年8月9日に策定・公表された。
① 気候変動の影響による降雨量の増大などを踏まえ、想定し得る最大規模までの洪水を想定し、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」を具体的に盛り込んだ計画
② 国管理区間と県管理区間の策定を同時に進めることにより、本川~支川~流域の連携推進を図った計画
→この2点を併せ持った全国で初めての計画
《質疑応答》
問 災害に向けた取組みは村などが実施しているのか
答 財政規模が小さい、マンパワーが不足するなどの課題がある地自体もあるため、県が代替して実施している事業もある(災害公営住宅の建設など)
問 緑の流域治水として、通常の森林整備にプラスアルファ加えていることはあるのか。
答 各地で流木などの被害も多く、河川だけでなく山の整備が大切という考えは浸透した。令和3年度に林地保全に配慮した林業のガイドラインを設定して、林業の施行業者等に災害が起こりにくい山づくりを示して啓蒙に取り組んだり、森林の再生だったり、作業道の推進、いろいろなことに取り組んでいる
問 流域治水の考えをどうやって浸透させていくのか
答 まさに今から計画を立てたものを現場に落とし込んでいく中では流域の住民、県民の理解協力が不可欠。取組みの見える化として動画や立体地図を作成し3Ⅾで見ていただくと、こんな地形になっているんだと改めて気付かれる住民も多かった。小中高生など若い世代に事実や地形的な特徴を周知してほしいとの声もいただいた。作成したコンテンツを活用して周知を進めていきたい。
【考察】
熊本県の流域治水政策に関しては、令和2年球磨川の豪雨災害と大きく関連していて、復興計画と綿密な関係があります。
ここが豪雨などで、被災をしてない都道府県との違いであると感じました。
また、川辺川ダム、荒瀬ダム撤去を始め、ダム建設の是非を判断してきた歴史から、流域治水に関して、ダムに頼らずに対応していくという姿勢、「緑の」という通り、森林政策を重視していく姿勢がみて取れると感じました。(実際の森林政策は課題が多くあるとも思う)
球磨川流域のグリーンニューディール策として持続可能な地域の実現のために、新しいAIやICTの活用と地域資源の活用、上流から下流域までの様々な主体・行うべき施策が示されており、災害を乗り越えようとする球磨川流域地域だからこそ生み出されてくる政策であると感じました。
こうした流域意識に様々な施策を結び付けることは、自然の豊かさと脅威を日常から感じさせるもので、政策としては的を得ている一方で、
流域意識を県民に普及させることは、課題があるとも感じます。
熊本県は流域治水の考えを動画で作成したり、熊本県の地形を見ることができる3Ⅾマップを全市町村に配布しています。
本県では令和元年東日本台風で城山ダムの緊急放流、宮ケ瀬ダムにおいても緊急放流の直前までいったとされ、令和2年流域治水関連の法律により、相模川や各河川で流域協議会ができたところですが、今後も上下流様々な地域に住む県民が流域意識をもち、適切に住まいの選択や災害時の避難に繋げることが求められ、流域治水を伝えるべき県の役割は非常に大きい。
令和5年度から行われる水防災戦略においても、流域治水の考えが取り入れられたことから今後、県民が流域を感じるための様々な政策が求められます。
今回の視察では、現地含め大変丁寧にご説明いただきました。1日も早い復興をご祈念申し上げますとともに、ご案内くださった皆様に心から感謝申し上げます。