会議日:令和7年10月22日【決算特別委員会】
土壌保全対策について

土壌保全対策は、丹沢など山奥で行われており、ふだんなかなか見えてこないような事業ですが、超過税など特別な負担を持って整備していることもあり、県民をはじめ登山者など、山に入る際に見える機会などもあると思います。事業について確認します。 まず、水源環境保全再生特別会計の歳入において、3項繰入金の減額補正が行われている理由について伺います。また、土壌保全対策など現行事業への影響はないのか併せて伺います。

繰入金の減額補正については、一般会計繰入金において、個人県民税の超過課税等による収入が令和6年度当初予算と比べて減収が予想され、1,648万1,000円を減額補正したこと、また、基金繰入金において、生活排水処理施設整備費補助などの市町村補助の入札残や執行残、モニタリング調査を行う森林環境調査費の入札残などから、令和6年度事業において3億2,300余万円 の不用額が見込まれたため、減額補正を行ったことが理由となります。 減額補正の主な原因としては、市町村補助事業の執行残や入札残であることから、土壌保全対策などの現行事業への影響はありません。

続いて、歳出において、土壌保全に該当する事業は決算調書上ではどの科目に該当しているのかを確認します。特に一般会計と特別会計のそれぞれで、代表的な事業内容と分担の考え方について伺います。

水源林の土壌保全対策については、特別会計上の水源林環境費の中の水源林土壌保全対策事業に位置づけられています。具体的な内容は、森林の崩壊地において崩壊の拡大防止や早期の植生回復を図るため、コンクリートブロック積工などの土木的工法を用いて土壌保全対策を行う水源林基盤整備事業のほか、高標高の人工林で土壌の流出を防ぐために丸太柵工などの土壌保全対策を行う高標高域人工林土壌保全対策事業などがあります。 なお、土壌保全を目的とした事業ではありませんが、一般会計上の自然公園施設整備費において登山道の整備を実施しており、登山道の土壌流出防止にもつながっているところです。

続いて、これまで登山道周辺での土壌保全対策にはどの程度予算を費やしてきたのか、そして、特別会計の支出実績と全体像を伺います。

登山道周辺での土壌保全対策としては、植生衰退による土壌流出防止のための植生保護柵工、 金網筋工、リターロール工のほか、登山道を多くの登山者が歩くことによる土壌流出を防止するため、構造階段や木道の設置などを実施しています。それぞれの場所の土壌流出の状況や植生衰退状況に合わせて工法を選定して実施しています。特別会計により事業を実施し始めた平成19 年度から令和6年度までの支出実績は約24億円となります。

全体の予算を伺ったところ、24億円をかけて平成19年から令和6年までやってきたということです。神奈川県の恵まれているところとして、登山道の整備は割としっかりしていると思うところもありますが、今、全国的にも、登山道を誰が管理して、整備費用をどう出していくかというのが課題になっていると聞きますので、今後、この後も少し聞いていきます。
主に登山道の木道設置は、鹿対策と併せて水源林土壌保全対策事業費で行っていると承知していますが、令和6年の実績も併せて、これまでの整備実績を伺います。また、一般会計による整備との違いや、今後の計画量や資金的な見通しについても確認をします。

登山者が安全に登山をするための登山道整備は一般会計により実施をしています。特別会計の事業では、水源環境保全再生実行5か年計画の対象地域による県が管理する登山道やその周辺で、土壌保全に資する施設を施工しています。登山道周辺で土壌保全対策を実施する場合は、 登山道整備と土壌保全対策による事業を並行して執行する場合が多いため、整備実績はこれらの事業を併せて管理しています。 整備実績としては、令和6年度は、木道が約540メートル、構造階段が約240メートルであり、 特別会計により事業を実施することとなった平成19年度から令和5年度までに整備した木道は約 4キロ程度、構造階段は約5キロ程度となっています。また、仕様によっても異なりますが、 木道等の整備に係る令和7年度の直接工事費の単価は、4メートルの木道1基当たり約15万円、 3メートルの構造階段1基当たり約21万円であり、価格が落ち着いていた令和2年度と比べ、約2割程度上昇しています。今後の計画ですが、山岳地の登山道は、利用状況や自然状況により施設の老朽化の程度も異なるため、現地の状況を確認しながら事業を実施していきたいと考えています。 なお、令和6年度から実施予定の新たな水源環境保全再生実行5か年計画では、標高の高い稜線における登山道の木道等の整備を含め、土壌保全対策の推進の全取組、全体として5年で約18 億円の事業費を見込んでいます。

続いて、豪雨の影響というのも今後懸念されるところですが、それによって使用できなくなる登山道も出てくると思っています。
過去に、令和元年台風において、登山道が崩壊したことがありましたが、その復旧状況と、今後の豪雨リスクへの備えについてどのように考えているのか、確認します。

令和元年東日本台風では、箱根の観測地点で922.5ミリの日降雨水量が観測され、県内各地で被害が発生しました。丹沢大山国定公園においても、倒木や土砂流出による登山道の通行止めなどが相模原市内の神ノ川流域等で多く発生しましたが、現在は基本的に復旧しており、通行できる状況となっています。 なお、登山道の復旧は、災害復旧として予算を計上せずに、登山道整備の一環として実施しています。 豪雨リスクへの備えについてですが、水切りの適切な設置、木道や植生保護柵の整備などが、 登山道を含め山全体の回復力の向上につながると考えており、引き続きこうした取組を進めていきます。

続いて、工法の話に移りますが、これまで丹沢大山の再生のための対策で用いられてきた有効な整備手法というものがあれば確認します。以前、山小屋の関係者からも、少し木道が多いというお話を聞いていることもあり、また、木道があることで、人がすれ違う際に、歩いている方が木道を避けて、かえって土壌を崩してしまうということもあると思います。以前も質疑しましたが、他の山域では、現地由来の木や石などを活用した近自然工法というものを導入しており、県内でも箱根の国立公園などで取り入れられていると聞いていますが、 このあたりの状況や評価などがあれば伺います。


登山道やその周辺での土壌保全対策として、木材や石材を使用した整備も実施しています。 施工箇所で資材を調達して施工するということは基本的にはありませんが、丹沢山地内のダムに堆積した石材を活用したり、撤去した木道などの木材を土留め等に再利用したり、工夫しながら整備を実施しているという状況です。

この後で、登山者が少し関わる余地というところでも確認しますが、登山者が歩きやすい目線も大切だと思いますので、 よろしくお願いします。
続いて、自然保護費について伺っていきます。県民協働型登山道維持補修規定に基づく活動負担金として238万5,000円支出していますが、 令和元年に実施した丹沢大山登山環境意識調査によると、登山者の約6割が県内で、4割が県外から来訪しているという結果があり、こうした利用実態を踏まえて、県民協働による登山道補修や清掃活動、また自然公園指導員などの現場での活動状況を伺います。 また、他の山域では、登山のついでに補修や清掃に参加したいというニーズもあると聞いていまして、今後、県民協働だけでなく多様な方に整備に入ってもらう工夫も必要になってくると思いますが、見解を伺います。


県民協働による登山道補修についてですが、現在、登山者の団体である、みろく山の会や神奈川県自然公園指導員連絡会などの4団体と登山道の区画を決めて、県民協働型登山道維持補修協定を締結し、登山者の水切りや階段の補修等を行っていただいています。また、県民協働による清掃活動についてですが、様々なボランティア団体の協力をいただきながら、地元市町村や県も一緒になって、丹沢大山クリーンピア等で山のごみの対策を実施しています。自然公園指導員は、県内の自然公園を巡視し、公園利用者への自然解説、ごみ持ち帰りなどの適正利用についての指導、清掃活動、歩道などの危険箇所等に係る情報提供などの活動を行っています。また、 先ほどの協定に基づく活動とは別に、自然公園指導員の有志の方々に、かながわパークレンジャーが行う軽易な登山道補修等にも協力をいただいています。県外の方の参加については、 先ほど説明しました自然公園指導員やみろく山の会の会員には、県民だけでなく県外の方々もいると承知していますので、こうした団体の方との協働をきっかけにしてご協力いただけるも のと考えています。さらに、令和元年度から公益財団法人全国高等学校体育連盟が主催する新人登山大会において、県職員が自然再生の取組を紹介するなど、若い人にも関心を持ってもらえる機会の提供に努めています。

続いて、水源林土壌保全対策事業について、植生保護柵ということで記載されていますが、、登山道を歩いているとさまざまな植生保護柵を見かけます。効果についてはどのように評価をしているのでしょうか。また、老朽化して放置された柵の撤去も課題と考えますが、方針などあれば伺います。

土壌保全対策として登山道周辺に設置した植生保護柵内では、おおむね植物が繁茂しており、 設置から年数のたった柵では樹林化が進んでいる場所もあることから、植生回復による土壌保全効果は高いと評価しています。役割を終えた植生保護柵については、撤去も視野に入れておりますが、現時点では植生保護柵の維持管理を行い、植生保護の機能を維持する考えです。

老朽化し放置された柵の撤去に関してお答えします。県有林等で植栽木の保護のために設置した柵のうち老朽化したものについては、既に役割を終えたものと考えています。中でも、登山道沿いなどで破損し危険な状態になっているものは、応急工事用の予算を活用し撤去を行います。

続いて、森林整備のために作業道を造っていると思いますが、登山道をまたぐような形で随分増えてきたなと感じています。当面、整備の予定がない水源協定林の返還林などの作業道のメンテナンスというのは、土壌保全対策の重要な取組みになると思いますが、実績や現状、今後どう取り組むのか伺います。

森林整備のための作業道は、主に木材の搬出を目的に、県、市町村、林業事業体等様々な主体により造られており、令和6年度末までに県内で累計537㎞が造られています。本県の水源施策においては、その作業道の多くが林業事業体による森林整備や間伐材搬出などを支援する水源林長期施業受委託事業の中で造られており、その実績は、令和6年度末までの累計で265㎞となっています。また、この長期施業受委託事業で造られた作業道は、林業事業体により木材の搬出作業などを通じて、適時メンテナンスが行われています。 一方、県と森林所有者が契約を締結して森林整備を行っている水源協定林などにおいては、 木材の生産や搬出を念頭に置いた整備を行っていないことから、作業道の設置はごく少数にとどまっています。また、水源協定林は、契約期間中の森林整備により、当面特別な手入れが不要な状態で森林所有者に返還していますが、返還後、仮に台風等の気象災害により作業道に起因した土壌の流出などが発生した場合には、令和9年度以降の次期水源施策における新たな取組みの中で土壌保全対策を講じていきたいと考えています。

続いて、航空レーザー計測及び森林資源解析業務委託の概要と成果について伺います。 この調査から、どのような知見が得られ、今後の土壌保全対策にはどのように生かすのか、また、繰越明許の金額が、令和6年度の支出額より多い理由について伺います。

航空レーザー計測とは、航空機に取り付けたレーザー測量装置を用いて、森林の状態や地形・ 形状などの基礎的な情報を広域的に収集できる調査手法です。これにより、森林の状況などの森林資源情報が分かるほか、木で覆われるなど人の目で分からない地形状況を正確に把握することが可能となります。本委託事業の概要としては、この手法を用いて県内水源保全地域における森林資源情報を収集するとともに、その情報を解析し、現地における補完調査と併せて森林の手入れの状態の把握などを委託するものです。 なお、本委託事業は、県内水源保全地域を大きく2つのエリアに分け、令和6年度と7年度で実施することとし、今回の決算調書主要施策説明書に計上されました事業費は、令和6年度分の事業となります。
また、この委託事業では、航空レーザー計測のデータを活用することにより、土壌の崩壊箇所やその兆しがある箇所をある程度特定することが可能となりましたので、令和9年度以降の次期水源施策におきましては、この知見を活用し、おおむね5年に1度、航空レーザー計測による森林の状態把握と現地の巡視を組み合わせて行うことで、崩壊地の拡大防止などの土壌保全対策の実施につなげていきたいと考えています。 最後に、令和6年度事業費の明許繰越につきましては、当該年度内に前金払いとして契約額の3割を支払いましたが、現地での植生調査の精度を確保する関係上、年度内に業務を完了できない見込みだったため、残りの7割を明許繰越したものです。なお、追加費用の発生はありません。

最後の質疑にしますが、登山道整備の財源ということでは、登山者の受益者負担や寄附をどのように位置づけているのでしょうか。また、民間の登山アプリとの連携や県の基金の活用など、 新たな寄附の仕組みについて見解を伺います。

丹沢大山など本県の自然公園は土地所有者が非常に多いことや、県が管理する登山道以外にも非常に多くの登山道があることなどの課題があることから、登山道整備に係る財源を直接登山者から徴収することは非常に難しいと考えています。ただし、登山道ではありませんが、登山道沿いなどに設置されたトイレについては、電気も水道もなく維持管理費用が非常に多くかかることから、塔ノ岳などの主要ルートの山頂のトイレは、1回の使用につき100円の協力をお願いしています。 民間の登山アプリとの連携については、現時点で実用可能な具体的な情報を持っていませんので、情報収集を進めていきたいと考えています。
登山道の整備については一般会計による整備に加えて、県民が特別に負担している水源環境保全・再生特別会計による支出を合わせることで、登山道周辺と合わせて木道や構造階段などが設置され、かつて登山道のオーバーユースが進んだ丹沢山系において土壌保全対策が進んできました。
一方で、すでに県民協働や自然公園指導員制度、トイレでの協力金など、県外の方など多様な関係者に協力いただく取組みをしていますが、丹沢における登山者には県外の方も多く訪れることや、近年の登山道を巡る全国的な議論を踏まえると、寄付の在り方も含めて受益者負担に対する取組みや現場に合わせた整備工法の工夫等今後も不断の検討を求めました。
他にも水源施策により整備された作業道や植生保護柵などは今後のメンテナンス等にもしっかり取り組むことに加えて、森林資源解析等においても土壌保全対策の現状や効果、必要性など県民等にもしっかり示していくよう求めました。
神奈川県議会議員:佐藤けいすけ
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